『500万円未満の工事しかやらないから、建設業許可は要らないですよね?』。この質問は非常に多いのですが、実は正確に理解している方は意外と少ないのが実態です。500万円の判断を誤ると、無許可営業として3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という重い罰則が科される可能性があります。
この記事では、建設業許可が不要となる『軽微な建設工事』の基準と、実務で判断を誤りやすい5つの落とし穴を解説します。
この記事で分かること
- 建設業許可が不要な『軽微な建設工事』の法令上の定義
- 500万円は税込か税抜か
- 材料支給・分割発注など、判断を誤りやすい5つの落とし穴
- 無許可で500万円以上の工事を行った場合の罰則
建設業許可が不要な工事とは|『軽微な建設工事』の基準
建設業を営むには原則として建設業許可が必要ですが、一定の規模以下の工事だけを請け負う場合は許可なしで営業できます(建設業法第3条第1項ただし書き)。
この『軽微な建設工事』の基準は、建設業法施行令第1条の2で以下のとおり定められています。
- 工事の種類 | 許可が不要な基準
- 建築一式工事 | 請負代金が1,500万円未満の工事
- 建築一式工事(木造住宅) | 延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
- 上記以外の建設工事 | 請負代金が500万円未満の工事
建築一式工事とそれ以外の工事で基準が異なる点に注意してください。多くの建設業者が該当するのは『500万円未満』の基準です。
なお、2025年2月1日施行の建設業法施行令改正では、特定建設業許可の金額基準は引き上げられましたが、この500万円の基準に変更はありません。
500万円ルールの5つの落とし穴|安易な判断が命取りに
落とし穴1:500万円は『税込』で判断する
最も多い誤解がこれです。500万円の基準は消費税込みの金額で判断します。
税抜480万円の工事でも、消費税10%を加えると528万円となり、500万円以上の工事に該当します。この場合、建設業許可が必要です。
落とし穴2:発注者が材料を支給しても、材料費は請負代金に含める
注文者(発注者)が材料を提供する場合、その材料の市場価格と運送賃を請負代金に加えた金額で判断します(建設業法施行令第1条の2第3項)。
例えば、発注者が300万円の設備機器を支給し、施工費として請負代金が250万円の場合、合計550万円として判断されます。『請負代金だけなら500万円未満だから大丈夫』とはなりません。
実務ではこういう相談が多い
機械器具設置工事で『機械は発注者が直接メーカーから購入したので、うちは取付工事だけ。工事代金は300万円だから許可は不要では?』というご相談が多いです。しかし機械の代金も材料費として合算されるため、許可が必要になるケースがほとんどです。
落とし穴3:工事を分割しても合計額で判断される
同一の建設業者が工事を2つ以上の契約に分割して請け負う場合、各契約の合計額で判断します(建設業法施行令第1条の2第2項)。
例えば、本来1件500万円の工事を『第1期300万円・第2期200万円』に分けても、合計500万円として扱われます。意図的な分割発注は、行政庁も十分に把握しており、発覚すれば無許可営業として処分の対象になります。
ただし、『正当な理由に基づく分割』は例外とされています。工期や施工条件が明確に異なるなど、合理的な理由がある場合は別工事として扱われる余地がありますが、判断に迷う場合は所管行政庁に事前確認することが安全です。
落とし穴4:追加工事で500万円を超えるケース
当初の契約が480万円(税込)であっても、追加工事や設計変更により最終的な請負代金が500万円以上になることがあります。この場合も、合計額が500万円以上であれば建設業許可が必要です。
追加工事が発生しやすい現場では、当初契約の段階から許可の要否を慎重に判断してください。
落とし穴5:『附帯工事』は別工事としてカウントしない
建設業法第4条では、許可を受けた建設業に附帯する工事(附帯工事)も一体として施工できると定めています。一方、許可を持たない業者が『主たる工事は500万円未満だが、附帯工事を含めると超える』場合、その工事全体について許可が必要になり得ます。
実務ではこういう相談が多い
『うちは500万円を超えることはないから許可は要らない』と言い切る事業者の方に、材料費や消費税を含めて計算し直していただくと、実は超えているケースが珍しくありません。特に単価の高い設備工事や電気工事では、材料支給分を含めると500万円を大幅に超えることがあります。一度でも超える可能性があるなら、許可を取得しておくことを強くおすすめします。
無許可営業の罰則|法人は最大1億円の罰金
500万円以上の工事を無許可で請け負った場合の罰則は、想像以上に重いものです。
- 対象 | 罰則 | 根拠条文
- 行為者(個人) | 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金 | 建設業法第47条
- 法人 | 1億円以下の罰金 | 建設業法第53条(両罰規定)
さらに、無許可営業が発覚した場合は以下の実害もあります。
- 元請業者が無許可業者に下請発注した場合、元請の許可も取消し対象になる
- 過去の工事実績が許可申請の経験年数に算入されないおそれがある
- 取引先からの信用失墜
まとめ
確認すべきチェックリスト:
- 請負代金は消費税込みで500万円未満か
- 発注者支給の材料費・運送費を加えても500万円未満か
- 工事を不自然に分割していないか
- 追加工事が発生しても500万円未満に収まるか
- 建築一式工事の場合、1,500万円未満(又は木造住宅150㎡未満)か
建設業許可の取得要否の判断や、許可申請のご相談は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
