【結論】建設業者が宅建業免許を取得すると、自社で建てた住宅の直接販売、中古住宅の買取リノベーション再販、経営事項審査(経審)Y点の改善という3つのメリットが得られます。大阪府知事免許の場合、申請手数料は33,000円(電子申請は26,500円)、審査期間は申請受付後およそ5週間で、免許後に保証協会へ加入すれば弁済業務保証金分担金60万円で営業を開始できます。実務上の最大の関門は営業所技術者等(令和6年12月改正前の「専任技術者」)と専任の宅地建物取引士の兼任で、同一法人かつ同一の場所(同一建物)であれば、申立書の提出と個別審査を経て兼任が認められる余地があります。
この記事で分かること
- 建設業者が宅建業免許を取得して兼業する3つの具体的なメリット
- 大阪府で宅建業免許を新規取得するための要件・費用・審査期間・必要書類
- 営業所技術者等(旧・専任技術者)と専任の宅地建物取引士の兼任が認められる条件
- 兼業する場合の事務所要件と実務上のポイント
- 宅建業免許の更新時期(有効期間5年・更新は満了日の90日前から30日前まで)
建設業許可と宅建業免許の両方を取得する3つのメリット
宅地建物取引業(宅建業)とは、宅地または建物の売買・交換を自ら行う行為、および宅地建物の売買・交換・貸借の代理または媒介を行う行為を、業として営むことをいいます(宅地建物取引業法第2条第2号)。免許の有効期間は5年間で、5年ごとの更新が必要です。建設業者がこの免許を取得して兼業することで、事業の幅が大きく広がります。ここでは代表的な3つのメリットを解説します。
メリット1:自社建築物件の直接販売で利益率アップ
建設業者が自ら建築した住宅を第三者に販売する場合、それが宅建業法第2条第2号に規定する『宅地建物取引業』に該当するかどうかは、『業として』行うかどうかで判断されます。
国土交通省の『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』では、以下の5つの要素を総合的に勘案して判断するとされています。
| 判断要素 | 事業性が高い(免許が必要になりやすい) | 事業性が低い |
| 取引の対象者 | 不特定多数に広く募集 | 親族・隣接地主など特定の関係者 |
| 取引の目的 | 利益目的 | 相続税の納税や既存住宅の処分など |
| 取得経緯 | 転売目的で取得 | 自己使用目的で取得 |
| 取引の態様 | 自ら購入者を募り直接販売 | 宅建業者に代理・媒介を依頼 |
| 反復継続性 | 反復継続的に取引 | 1回限りの取引 |
建売住宅のように複数棟を建築して不特定多数に販売する場合は、明らかに『業として』に該当し、宅建業免許が必要です。宅建業免許を取得すれば、仲介業者を通さず自社で直接販売できるため、仲介手数料の負担がなくなり、建築から販売まで一気通貫で利益率の向上が見込めます。
実務ではこういう相談が多い
『自社で建てた物件を1棟だけ売るなら免許は要らないのでは?』というご相談をいただくことがあります。確かに、自己使用目的で建てた物件を事情の変化で1回限り売却するだけであれば、『業として』に当たらない可能性はあります。しかし、建設業者が建物を建てて販売するという行為は、取得経緯が『転売目的』と評価されやすく、たとえ1棟でも区画割り販売を伴う場合は反復継続的な取引とみなされます。判断に迷う場合は、所管の行政庁に事前確認することをお勧めします。
メリット2:中古住宅買取からリノベーション販売のビジネスモデル
近年、中古住宅を買い取ってリノベーション工事を施し、付加価値をつけて再販売するビジネスモデルが注目されています。建設業許可を持つ事業者が宅建業免許も取得すれば、仕入れ(買取)・工事(リノベーション)・販売の全工程を自社で完結できます。
外注コストを削減できるだけでなく、工事品質を自社で管理できるため、お客様への訴求力も高まります。
メリット3:経審(Y点)における兼業売上高の加算効果
公共工事の入札参加を目指す建設業者にとって、経営事項審査(経審)の点数は重要です。経審の経営状況分析(Y点)では、純支払利息比率や負債回転期間の計算において、売上高は『完成工事高+兼業事業売上高』で算出されます。
宅建業による売上が兼業事業売上高に加算されることで、売上高の分母が大きくなり、純支払利息比率が改善する可能性があります。純支払利息比率はY点への寄与度が最も高い指標とされているため、兼業売上の増加がP点の向上につながるケースがあります。
| 指標 | 売上高に兼業売上を含むか | Y点への寄与度(一般に解説される目安) |
| 純支払利息比率(X1) | 含む | 約29.9%(8指標中で最大) |
| 負債回転期間(X2) | 含む | 約11.4% |
| 売上高経常利益率(X4) | 含む | 約5.7% |
※寄与度の数値は経営状況分析の解説として一般に用いられている目安であり、実際の評点は各社の決算内容によって変動します。
大阪府で宅建業免許を新規取得するには?【要件・費用・審査期間】
大阪府内のみに事務所を設置する場合は大阪府知事免許、複数の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣免許が必要です。ここでは多くの建設業者が該当する知事免許を中心に解説します。
免許区分はどのように決まるのか
宅建業法第3条第1項に基づき、免許区分は事務所の設置場所で決まります。
| 区分 | 条件 | 申請先 |
| 都道府県知事免許 | 1つの都道府県内のみに事務所を設置 | 大阪府知事(府庁咲洲庁舎2階の専用窓口) |
| 国土交通大臣免許 | 2以上の都道府県に事務所を設置 | 国土交通大臣(提出先は令和6年5月25日以降変更) |
専任の宅地建物取引士とは?
専任の宅地建物取引士とは、その事務所に常勤し、専ら宅建業の業務に従事する宅地建物取引士のことです。事務所ごとに、宅建業に従事する者5名に1名以上の割合で設置しなければなりません(宅建業法第31条の3)。
大阪府の案内では、「常勤性」と「専従性」の両方が求められ、他の法人の役員を兼ねたり、会社員・公務員など他の職業に従事したりすることは原則としてできません。通常の方法では通勤できない場所に住んでいる場合も「専任」とは認められません。
- 有効な宅地建物取引士証の交付を受けていること
- 当該事務所に常勤していること(常勤性)
- 専ら宅建業の業務に従事できる状態であること(専従性)
手数料と審査期間はどれくらいか?
大阪府知事免許の新規申請にかかる費用と期間は次のとおりです(2026年10月11日に大阪府の公表ページで手数料を再確認)。
| 項目 | 金額・期間 | 補足 |
| 免許申請手数料(新規・窓口) | 33,000円 | 更新も同額。窓口はPosシステムでの現金納付のみ |
| 免許申請手数料(新規・電子申請) | 26,500円 | 更新も同額。Posシステム(現金)またはコンビニ納付を選択可 |
| 審査期間 | 申請受付後 約5週間 | 新規・更新とも同じ目安 |
| 提出部数 | 正本1部・副本1部 | 副本は受付印を押して返却 |
| 宅地建物取引士の新規登録 | 37,000円 | 取引士証の交付は別途4,500円 |
官公庁が発行する証明書(登記事項証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書、納税証明書など)は、いずれも申請日前3か月以内に発行されたものが必要です。事務所の写真は申請前6か月以内に撮影したカラー写真を使用します。なお、大阪府では新規免許申請の郵送受付は原則として行っていません。
営業保証金と保証協会はどちらを選ぶか?
宅建業の開業にあたっては、消費者保護のために営業保証金の供託または保証協会への加入が必要です。免許を受けただけでは営業を開始できず、供託または加入を済ませてその旨を届け出て初めて営業できる点に注意してください。
| 方法 | 本店(主たる事務所) | 支店(従たる事務所)1店につき |
| 営業保証金の供託 | 1,000万円 | 500万円 |
| 保証協会加入(弁済業務保証金分担金) | 60万円 | 30万円 |
多くの事業者は、初期費用を大幅に抑えられる保証協会への加入を選択しています。保証協会は全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)と不動産保証協会の2団体があり、いずれか一方に加入します。なお、大阪府も案内しているとおり、分担金とは別に協会の入会金・年会費等が必要です。
実務ではこういう相談が多い
『営業保証金1,000万円は用意できない』というご相談をよくいただきます。保証協会に加入すれば弁済業務保証金分担金60万円で開業できますので、建設業者が新規参入する際はこちらを選ぶのが一般的です。ただし、保証協会への入会金や年会費が別途必要となりますので、トータルコストを事前に確認しましょう。
宅建業免許の更新はいつ、どう行うのか?
宅建業免許の有効期間は5年で、引き続き営業するには有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に更新の免許申請をする必要があります(大阪府の更新手続きの案内で確認)。更新手数料は新規と同額で、窓口33,000円・電子申請26,500円です。
| 項目 | 内容 |
| 有効期間 | 5年 |
| 更新申請の受付期間 | 満了日の90日前から30日前まで |
| 更新手数料 | 窓口33,000円/電子申請26,500円 |
| 審査期間 | 申請受付後 約5週間(新規と同じ目安) |
建設業許可の更新(満了日の30日前まで)とは受付期間の考え方が異なります。建設業と宅建業の更新時期がずれやすいため、両方の満了日を一覧にして管理しておくと、更新漏れを防げます。
営業所技術者等と専任の宅建士は兼任できるのか?
建設業許可と宅建業免許の両方を取得する際に、最も実務上問題となるのが営業所技術者等(令和6年12月13日の改正前は「専任技術者」)と専任の宅地建物取引士の兼任です。結論として、建設業の営業所と宅建業の事務所が同一法人・同一の場所であれば兼任が認められる余地があります。事務所が別々の場合は兼任できません。
国のガイドラインによる整理:同一の営業体・場所かどうかが分かれ目
国土交通省の建設業許可事務ガイドライン(最終改正 令和7年2月1日)では、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)について、「建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き『常勤であるもの』には該当しない」と整理されています。裏を返せば、営業体(法人)と場所が同一であれば常勤性が否定されない、ということです。営業所技術者等についても同じ考え方で運用されています。
| ケース | 兼任の可否 |
| 建設業の営業所と宅建業の事務所が同一法人・同一建物内 | 条件付きで可能(行政庁の個別審査) |
| 建設業の営業所と宅建業の事務所が別の場所 | 不可 |
| 別法人間での兼務 | 不可 |
大阪府での運用:申立書の提出と個別判断
大阪府では、専任の宅地建物取引士が建設業法等の他の法令による専任を要する業務に従事している場合、通常の提出書類(専任性に係る誓約書+宅地建物取引士証の写し)に加えて、「法令による専任業務の兼務に関する申立書」の提出を求めています。この取扱いは同一法人(または同一個人業者)・同一場所(同一建物)で勤務する場合に限られ、指定様式はなく、大阪府の手引き(27ページ)を参照して作成します。
提出すれば自動的に認められるわけではなく、勤務実態や業務量を踏まえた個別審査である点に注意してください。大阪府の運用では、次のような点が総合的に判断されます。
- 当該事務所に通常の方法で通勤可能な場所に居住しているか
- 他の法人の常勤役員や従業員を兼ねていないか
- 営業時間中にその事務所で業務に従事できる状態にあるか
- 業務量が過大で一方の業務に支障が出るおそれはないか
実務ではこういう相談が多い
『専任技術者と専任宅建士の兼任は認められないと聞いたのですが…』と不安を抱えてご相談に来られる方が少なくありません。実際には、同一法人・同一建物内であれば国のガイドラインに基づき兼任の道が開かれています。大阪府でも、申立書を提出して審査を受ければ認められるケースが大半です。ただし、建設業の現場が多忙で営業所にほとんど不在、といった状況では常勤性に疑義が生じ得ますので、勤務実態を説明できる体制を整えておくことが大切です。
建設業の事務所を宅建業の事務所として使えるのか?
建設業の事務所と宅建業の事務所を同一の場所に設置すること自体は問題ありません。ただし、宅建業法上、事務所には一定の独立性が求められます。
大阪府が求める事務所の独立性
大阪府では、宅建業の事務所について以下の基準を設けています。
- 継続的に業務を行うことができる施設であること
- 他の法人や個人の事務所との混在、居住場所との混在は認められないこと
- テント張り、ホテルの客室は不可。コンテナハウス、トレーラーハウスなど仮設・移動可能な物件も不可
- シェアオフィス・レンタルオフィスは、時間帯利用(夜間は他社が利用)や共有会議室を事務所とすることは不可
- 申請時点で申請書記載の電話が開通しているなど、外部と連絡が取れる状態であること
他の事業者と同一フロアを使用する場合
他社と同じフロアに事務所を構える場合は、次の条件を満たす必要があります。
- 床面からの高さ170cm以上の固定式パーテーション等で仕切られていること(枠のみのものやガラスなど向こう側が見えるものは不可)
- 他社の事務所部分を通らずに直接出入りできること
- どちらがどの会社であるかの表示をすること
- 間取図と平面図を添付し、自社・他社・共有部分の範囲を明記すること
自社の建設業事務所と兼用する場合
同一法人が建設業と宅建業を同一事務所で営む場合、独立性の問題は生じにくいですが、以下の点に注意してください。
- 事務所入口(建物内にある場合は建物入口にも)に、商業登記どおりの商号を省略せずに掲示すること
- 新規免許申請の時点では、宅建業を営んでいる旨の表示(売買・媒介等の看板)はできないこと
- 免許後は、事務所内に業者票と報酬額表(宅建業法第46条に基づく報酬の限度額)を掲示すること
- 従業者証明書を従業者に携帯させ、事務所ごとに従業者名簿を備えること
- 帳簿の備え付けなど宅建業法上の義務を遵守すること
実務ではこういう相談が多い
『今の建設業の事務所をそのまま宅建業の事務所にできますか』というご質問をよくいただきます。同一法人であれば基本的に可能ですが、事務所の写真撮影による審査がありますので、整理整頓された状態で、宅建業の事務所としての体裁を整えておく必要があります。報酬額表の掲示場所や標識の設置場所も事前に確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 建設業の営業所技術者等が、そのまま宅建業の専任の宅地建物取引士になれますか?
同一法人(または同一個人業者)で、建設業の営業所と宅建業の事務所が同一の場所(同一建物)であれば、兼任が認められる余地があります。大阪府では「法令による専任業務の兼務に関する申立書」を提出し、勤務実態や業務量を踏まえた個別審査を受けることになります。事務所が別の場所にある場合や、別法人での兼務は認められません。
Q2. 宅建業免許の取得にはいくらかかりますか?
大阪府知事免許の新規申請手数料は33,000円(電子申請は26,500円)です。これに加えて、免許後に営業保証金1,000万円の供託、または保証協会への加入(弁済業務保証金分担金60万円+入会金・年会費等)が必要です。宅地建物取引士の登録が未了の場合は、登録37,000円と取引士証交付4,500円も見込んでおきます。
Q3. 申請してからどれくらいで営業を開始できますか?
大阪府の案内では、新規・更新とも申請受付後およそ5週間の審査期間を要します。免許を受けただけでは営業を開始できません。営業保証金の供託または保証協会への加入を済ませ、その旨を届け出た後に営業を開始できますので、開業予定日から逆算して余裕を持ったスケジュールを組んでください。
Q4. 自社で建てた住宅を1棟だけ売る場合も免許は必要ですか?
1回限りの取引で、自己使用目的で取得した物件を処分するようなケースでは「業として」に当たらない可能性があります。ただし、建設業者が建てて販売する行為は転売目的と評価されやすく、区画割り販売を伴う場合は反復継続的な取引とみなされます。無免許営業は宅建業法違反となるため、判断に迷う場合は所管の行政庁に事前確認してください。
Q5. 建設業の事務所と自宅が同じ場合、宅建業の事務所にできますか?
個人住宅の一部を事務所とする場合、大阪府では、寝室や台所などの居住部分を通らずに事務所に入れること、間仕切りを明確にして事務所であることを表示することが求められます。あわせて、住居全体の平面図と事務所内部の間取図の添付が必要です。区分所有建物(マンション等)の場合は、管理規約上、事務所としての使用が認められていることが前提となります。
Q6. 宅建業免許の更新はいつまでに申請すればよいですか?
免許の有効期間は5年で、有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に更新の免許申請をします。更新手数料は新規と同額(窓口33,000円・電子申請26,500円)です。建設業許可の更新時期とは別に管理する必要があります。
まとめ
建設業者が宅建業免許を取得して兼業することは、事業の幅を広げるうえで非常に有効な選択肢です。本記事のポイントを整理します。
| 項目 | 内容 |
| 主なメリット | 自社物件の直接販売、リノベ再販ビジネス、経審Y点の改善 |
| 免許区分 | 大阪府内のみなら知事免許、複数都道府県なら大臣免許 |
| 免許の有効期間 | 5年(満了日の90日前〜30日前に更新申請) |
| 申請手数料 | 大阪府知事免許 33,000円(電子申請26,500円) |
| 審査期間 | 申請受付後 約5週間 |
| 開業資金の目安 | 保証協会加入なら弁済業務保証金分担金60万円(別途入会金等) |
| 専任者の兼任 | 同一法人・同一場所なら可能(大阪府は申立書を提出し個別審査) |
| 事務所要件 | 同一法人の兼用は可能だが、独立性の確保と掲示物・帳簿等の整備が必要 |
ただし、営業所技術者等と専任の宅地建物取引士の兼任の可否は都道府県によって運用が異なります。また、宅建業には独自の義務(営業保証金、帳簿備え付け、従業者証明書の携帯など)がありますので、事前に十分な準備が必要です。
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参考情報
- 大阪府「宅地建物取引業免許の申請等」
- 大阪府「宅地建物取引業免許申請手数料等の納付について」
- 大阪府「更新の免許申請の概要」(PDF)
- 大阪府「専任の宅地建物取引士の常勤・専任の確認方法」
- 大阪府「事務所の独立性」
- 国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」(最終改正 令和7年2月1日)
最終更新日:2026年10月11日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄(行政書士ARISEリーガルオフィス)

