【結論】電気工事業の「普通の登録」(登録電気工事業者)と「みなし登録」(みなし登録電気工事業者)の違いは、建設業許可の有無です。建設業許可を持たずに電気工事業を営むなら様式第1で「登録申請」(有効期間5年・更新制)、建設業許可を持っているなら様式第18で「電気工事業開始届出」(遅滞なく提出・更新なし)を行います。主任電気工事士を変更したときは、登録なら様式第11(変更日から30日以内)、みなし登録なら様式第19(遅滞なく)で届け出ます。
電気工事業を始めるときに混乱しやすいのが、「普通の登録」と「みなし登録」の違いです。
実務上は「普通の電気工事登録」と呼ばれることがありますが、正式には登録電気工事業者といいます。一方、建設業許可を受けている事業者が電気工事業を営む場合は、登録ではなくみなし登録電気工事業者として届出を行う扱いになります。
この記事では、2026年8月29日時点で確認できる経済産業省の手引き等をもとに、次の2点を整理します。
- 登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者の違い
- 主任電気工事士を変更するときの必要書類
まず結論:違いは「建設業許可の有無」
| 区分 | 実務上の呼び方 | 建設業許可 | 手続き | 主な様式 | 有効期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | 普通の電気工事登録 | なし | 登録申請 | 様式第1 | 5年(更新登録が必要) |
| みなし登録電気工事業者 | みなし登録 | あり | 電気工事業開始届出 | 様式第18 | 更新なし(建設業許可の更新時に変更届が必要) |
ざっくり言うと、建設業許可を持たずに一般用電気工作物等の電気工事業を営むなら「登録」、建設業許可を受けている建設業者が電気工事業を営むなら「みなし登録」です。
ここでいう建設業許可は、電気工事業の建設業許可に限られません。経済産業省のQ&Aでは、建設業許可の種類は特に「電気工事業」以外でもよいとされています。
電気工事業の対象:一般用と自家用
電気工事業法上の電気工事は、大きく次の2つを前提に考えます。
- 一般用電気工作物:概括的には、一般家庭・商店等の屋内配線設備など
- 自家用電気工作物:概括的には、大規模マンション、ビル、オフィス、工場等の設備など(電気工事業法の適用対象は最大電力500kW未満の需要設備)
一般用電気工作物等を扱う場合は、登録電気工事業者またはみなし登録電気工事業者の整理になります。
一方、自家用電気工作物のみに係る電気工事業を営む場合は、「通知電気工事業者」または「みなし通知電気工事業者」という別の区分になります。この記事では、相談が多い「登録」と「みなし登録」を中心に扱います。
登録電気工事業者とは?【建設業許可なしの場合】
登録電気工事業者とは、電気工事業法に基づき、経済産業大臣、産業保安監督部長または都道府県知事の登録を受けて電気工事業を営む事業者のことです。登録の有効期間は5年で、引き続き営む場合は5年ごとの更新登録が必要です。
新規登録では、主に次の書類が必要になります。
- 様式第1「登録電気工事業者登録申請書」
- 申請者自身の誓約書
- 主任電気工事士に関する誓約書
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面
- 備付器具明細書
- 法人の場合は履歴事項全部証明書
- 経済産業大臣へ申請する場合は登録免許税の領収証書
経済産業大臣に対して申請する場合の登録免許税は90,000円とされています。都道府県知事への申請では、各自治体の案内も確認します。
みなし登録電気工事業者とは?【建設業許可ありの場合】
みなし登録電気工事業者とは、建設業許可を受けた建設業者が、電気工事業法(第34条)に基づき、事業開始の届出をして電気工事業を営む事業者のことです。
重要なのは、建設業許可があるから電気工事業法の手続きが不要になるわけではないという点です。建設業許可を受けていても、電気工事業を営む場合は、電気工事業法上の届出等が必要です。
みなし登録の開始時には、主に次の書類が必要になります。
- 様式第18「電気工事業開始届出書」
- 主任電気工事士に関する誓約書
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面
- 備付器具明細書
- 履歴事項全部証明書の写し
- 建設業許可証の写し
- 雇用を証明できる公的書類の写し
電気工事業を開始したときは、遅滞なく届出を行う扱いです。届出をせずに電気工事業を営んだ場合は2万円以下の罰金、登録を受けずに営んだ場合は1年以下の拘禁刑もしくは10万円以下の罰金(またはその併科)の対象とされています(懲役刑は2025年6月1日施行の改正刑法により拘禁刑に一本化)。
既に登録している会社が建設業許可を取った場合はどうなる?
既に登録電気工事業者として登録している会社が、新たに建設業許可を受けた場合は注意が必要です。
経済産業省Q&Aでは、新たに建設業許可を受けた場合、登録電気工事業者からみなし登録電気工事業者となるため、遅滞なく届出を行うとともに、登録業者としての廃止届も必要とされています。
また、建設業者となったときは登録の効力を失う旨も示されています。つまり、建設業許可を取った後も、古い「登録」のまま放置しないことが重要です。
主任電気工事士とは?誰がなれるのか
主任電気工事士とは、一般用電気工事の業務を行う営業所ごとに置かなければならない、電気工事の作業管理の責任者のことです(電気工事業法第19条)。登録電気工事業者・みなし登録電気工事業者のどちらにも設置義務があります。
主任電気工事士になれるのは、次のいずれかに該当する人です。
- 第一種電気工事士
- 第二種電気工事士免状の交付を受けた後、電気工事に関し3年以上の実務経験を有する者
次のような場合は、主任電気工事士の変更手続きを検討します。
- 主任電気工事士が退職した
- 別の営業所へ異動した
- 新たに主任電気工事士を選任した
- 免状の種類など届出事項に変更が生じた
- 営業所の新設・廃止や工事区分の変更とあわせて主任者を組み替える
登録電気工事業者とみなし登録電気工事業者では、使う様式と提出期限が次のように異なります。
| 区分 | 使う様式 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 登録電気工事業者 | 様式第11「登録事項等変更届出書」 | 変更があった日から30日以内 |
| みなし登録電気工事業者 | 様式第19「電気工事業に係る変更届出書」 | 変更があったとき遅滞なく |
登録電気工事業者が主任電気工事士を変更する場合の必要書類
登録電気工事業者の場合、主任電気工事士の変更は、登録事項等の変更届出として行います。
主な書類は次のとおりです。
- 様式第11「登録事項等変更届出書」
- 主任電気工事士に関する誓約書
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面
- 第一種電気工事士の場合:電気工事士免状の写し(免状裏面の講習受講記録を含む)または電気工事士であることの証明書
- 第二種電気工事士の場合:電気工事士免状の写し等に加えて、主任電気工事士等実務経験証明書
- 雇用を証明できる公的書類の写し
変更の提出期限は、変更があった日から30日以内です。
なお、営業所を新設した場合や、工事区分を「一般用電気工作物等」から「一般用電気工作物等及び自家用電気工作物」に変更する場合などは、対象営業所ごとの備付器具明細書も関係します。
みなし登録電気工事業者が主任電気工事士を変更する場合の必要書類
みなし登録電気工事業者の場合、主任電気工事士の変更は、みなし登録電気工事業者の届出事項の変更として行います。
主な書類は次のとおりです。
- 様式第19「電気工事業に係る変更届出書」
- 主任電気工事士に関する誓約書
- 主任電気工事士の従業員証明書
- 主任電気工事士等の実務経験を証する書面
- 第一種電気工事士の場合:電気工事士免状の写し(免状裏面の講習受講記録を含む)または電気工事士であることの証明書
- 第二種電気工事士の場合:電気工事士免状の写し等に加えて、主任電気工事士等実務経験証明書
- 雇用を証明できる公的書類の写し
変更の提出時期は、変更があったとき「遅滞なく」とされています。登録電気工事業者の30日以内とは表現が異なるため、実務上は変更日が決まったら早めに準備します。
また、みなし登録の届出事項には「建設業許可の許可年月日・許可番号」が含まれます。建設業許可を更新して許可年月日が変わったときも、様式第19による変更届出が必要になる点は見落としやすいので注意してください。
第一種と第二種で添付書類が変わる
主任電気工事士の資格確認では、第一種電気工事士と第二種電気工事士で必要書類が変わります。
- 第一種電気工事士:免状の写し等で足りる扱い
- 第二種電気工事士:免状の写し等に加えて、実務経験証明書が必要
第一種電気工事士の場合は、免状裏面の講習受講記録まで含めて確認される点に注意します。第二種電気工事士の場合は、実務経験の証明内容を事前に整理しておくことが重要です。
提出先は営業所の場所で変わる
電気工事業の登録・届出先は、営業所の所在地によって変わります。
- 1つの都道府県内だけに営業所がある場合:原則として都道府県知事
- 複数都道府県に営業所がある場合:経済産業大臣または産業保安監督部長等
また、建設業許可の行政庁と、電気工事業法の届出先が一致するとは限りません。経済産業省Q&Aでも、建設業の許可を得た行政機関と、電気工事業の届出を行う行政機関が異なることがあると説明されています。
なお、大阪府のみなし登録関係の申請窓口は外部委託されており(免状交付・業登録センター)、窓口持参または郵送のみで電子申請には対応していません(2026年8月時点)。提出前に大阪府の案内ページで最新の窓口情報を確認してください。
実務チェックリスト
主任電気工事士を変更するときは、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
- 自社が登録電気工事業者か、みなし登録電気工事業者かを確認する
- 変更対象の営業所を特定する
- 新主任電気工事士が第一種か第二種かを確認する
- 第二種の場合は実務経験証明の準備を早めに進める
- 雇用を証明できる公的書類を用意する
- 登録なら様式第11、みなし登録なら様式第19を使う
- 登録は30日以内、みなし登録は遅滞なく提出する
- 提出先が都道府県か経済産業大臣・産業保安監督部かを確認する
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業許可の業種が「電気工事業」でなくても、みなし登録になりますか?
A. なります。経済産業省のQ&Aでは、建設業許可の業種は電気工事業に限らないとされています。どの業種であっても建設業許可を受けている建設業者が電気工事業を営む場合は、みなし登録電気工事業者としての届出が必要です。
Q. みなし登録には更新がありますか?
A. みなし登録自体に5年ごとの更新はありません。ただし、建設業許可の許可年月日・許可番号は届出事項なので、建設業許可を更新したときは様式第19で遅滞なく変更届出を行う必要があります。登録電気工事業者の場合は5年ごとの更新登録が必要です。
Q. 建設業許可が不要な500万円未満の工事しか請け負わない場合も、電気工事業法の登録は必要ですか?
A. 必要です。建設業法の「軽微な建設工事(500万円未満)」のルールと、電気工事業法の登録・届出制度は別の制度です。請負金額の大小にかかわらず、一般用電気工作物等に係る電気工事業を営む場合は登録(建設業許可があれば届出)が必要です。
Q. 建設業許可を取った後、登録電気工事業者のまま放置するとどうなりますか?
A. 建設業者となった時点で登録の効力は失われるため、そのままでは手続き上の空白が生じます。みなし登録の開始届出(様式第18)を遅滞なく行うとともに、登録の廃止届も提出してください。届出をせずに営業を続けると罰金の対象になり得ます。
まとめ
電気工事業登録の「普通」と「みなし」の違いは、建設業許可の有無で整理できます。
建設業許可がなければ登録電気工事業者、建設業許可があればみなし登録電気工事業者です。ただし、建設業許可を持っていても電気工事業法の届出は必要であり、主任電気工事士を変更した場合も、所定の変更手続きが必要です。
主任電気工事士の変更では、第一種か第二種か、雇用証明をどう出すか、提出期限が30日以内か遅滞なくか、という点を早めに確認しておくと手続きがスムーズです。
参考・出典
- 経済産業省「電気工事業法の申請・届出等の手引き」
- 経済産業省「用語の定義」
- 経済産業省「1.電気工事業の登録申請(法第4条)」
- 経済産業省「4.登録事項等の変更届出(第10条)」
- 経済産業省「13.みなし登録電気工事業者の電気工事業の開始届出書」
- 経済産業省「14.みなし登録電気工事業者の届出事項の変更の届出」
- 経済産業省「よくある質問(電気工事業)」PDF
- 中部近畿産業保安監督部近畿支部「電気工事業法に係る手続に関するQ&A」
- 大阪府「電気工事業に係る変更届(みなし登録)」
最終更新日:2026年9月28日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄
