【結論】経営事項審査(経審)のW点(その他の審査項目(社会性等))は、令和8年(2026年)7月1日施行の改正(令和8年2月6日公布)で、①自主宣言制度(職人いきいき宣言)の新設(+5点)、②就業履歴の蓄積措置(CCUS関連)の配点引き下げ(民間工事を含む全工事15点→10点、全公共工事10点→5点)、③建設機械の加点対象への不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャの追加、④社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入状況の評価項目の削除、の4点が変わりました。自主宣言の加点は「審査基準日(決算日)が宣言日以降」であることが条件なので、次の決算日が来る前に宣言を済ませることが最も重要な対策です。
CCUSの加点だけに頼っていた事業者は配点が下がる一方、自主宣言の+5点を取れば、就業履歴の蓄積措置(10点)と合わせて、改正前の最大15点と同じ配点を確保できます。この記事では、改正内容の全体像と、大阪府で経審を受ける建設業者が今すぐ着手すべき対策を、2026年10月1日時点の情報で整理します。
この記事で分かること
- 2026年7月経審改正でW点がどう変わったか(自主宣言制度・CCUS・建設機械・社会保険)
- 自主宣言制度(職人いきいき宣言)で+5点を取るための手順と期限の考え方
- CCUS加点の引き下げ(15点→10点/10点→5点)に対応し、配点を維持する方法
- 制度改正による再審査の考え方
- 2025年7月施行済みの資本性借入金制度との合わせ技でP点を底上げする方法
2026年7月の経審改正とは?|建設業法全面施行と連動したW点の再編
経営事項審査(経審)とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査のことです(建設業法第27条の23)。2026年7月の改正は、このうちW点(その他の審査項目(社会性等))を再編するもので、施行日は令和8年7月1日です(国土交通省告示第262号による経営事項審査の項目・基準の一部改正)。『技能者の処遇改善に取り組む企業を、公共工事の入札で正当に評価する』という政策目的が根底にあります。
改正の背景
2025年12月に全面施行された改正建設業法では、『標準労務費』の導入や、労務費確保のための請負契約の適正化が柱となりました。この法改正に対応し、経審でも『技能者を大切にする企業かどうか』を評価軸に組み込む必要が生じたのです。
改正の柱は次の4つです。
| 改正項目 | 変更内容 | 点数への影響 |
|---|---|---|
| 自主宣言制度(新設) | 『建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無』を評価 | +5点 |
| 就業履歴の蓄積措置(見直し) | 民間工事を含む全工事15点→10点、全公共工事10点→5点 | 最大-5点 |
| 建設機械(拡大) | 不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加 | 保有していれば加点対象が増える |
| 社会保険(項目削除) | 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況を評価対象から除外(従来は未加入で各-40点) | 減点項目がなくなる |
実務ではこういう相談が多い
『CCUS加点が下がると聞いたが、何もしなければ点数は下がるのか?』という相談が増えています。結論から言えば、就業履歴の蓄積措置だけで加点を取っていた事業者は、最大5点下がります。しかし、自主宣言制度と組み合わせれば、配点上は最大15点(就業履歴の蓄積措置10点+自主宣言5点)を維持できます。改正の趣旨は『CCUSの活用と処遇改善の両方に取り組む企業を評価する』というものであり、両輪での対応が求められています。
経審W点の主な変更点|自主宣言・CCUS加点変更・建設機械・社会保険
1. 自主宣言制度(職人いきいき宣言)の新設:+5点
今回の改正の目玉が、『建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度』(愛称:職人いきいき宣言)による加点です。自主宣言制度とは、建設技能者を大切にし、処遇改善に積極的に取り組む姿勢を企業が宣言し、内外に発信する制度のことです。経審では、審査基準日が宣言日以降で、宣言書と誓約書(様式第7号)が提出されている場合に5点が加点されます。
宣言する取組は、自社の立場(元請・下請・発注者)に応じて以下のとおりです。
- 労務費の確保:標準労務費を踏まえた適正な見積もり・契約の実施
- 賃金の支払い:技能者への適正な賃金支払いの実施
- CCUSの活用:建設キャリアアップシステムを活用した就業履歴の蓄積
- 宣言企業との取引優先:自主宣言を行った企業との優先的な取引
宣言の申請は国土交通省の自主宣言制度ポータルサイトから行います。宣言書はポータルサイトから取得し、経審の申請時に誓約書(様式第7号)とあわせて提出します。
注意点として、宣言には『いつから始めるか』『誰が責任者か』といった具体的な計画の記載が求められます。形式的な宣言だけでは受理されない可能性があるため、社内体制の整備を先に進めておく必要があります。宣言制度の詳細は建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の解説記事で整理しています。
2. 就業履歴の蓄積措置(CCUS関連)の加点見直し:最大15点から最大10点へ
建設工事に従事する者の就業履歴を蓄積するために必要な措置(建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用)の加点は、次のとおり引き下げられました。
| 区分 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 全ての公共工事で措置を実施 | 10点 | 5点 |
| 民間工事を含む全ての工事で措置を実施 | 15点 | 10点 |
前述のとおり自主宣言(+5点)と組み合わせれば、配点の合計は改正前の最大15点と同じになります。つまり、『CCUSだけやっていればよい』から『CCUSの活用+処遇改善への具体的取組』の両方が求められる制度に変わったということです。CCUSの登録・運用はCCUS登録完全ガイドを参考にしてください。
3. 建設機械の加点対象拡大|不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャを追加
W7(建設機械の保有状況)の加点対象に、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャの2機種が追加されました。
- 不整地運搬車:労働安全衛生法施行令第13条第3項第33号に掲げる不整地運搬車
- アスファルト・フィニッシャ:自動車検査証の車体の形状欄に『アスファルト・フィニッシャ』と記載されている大型特殊自動車
従来からの加点対象(ショベル系掘削機、ブルドーザー、トラクターショベル、モーターグレーダー、移動式クレーン、大型ダンプ車、高所作業車、締固め用機械、解体用機械)に変更はありません。該当機械を保有する事業者は、特定自主検査等の要件を確認のうえ、新様式(別記様式3)で忘れずに申告してください。
4. 社会保険の加入評価項目の削除
従来のW点では、雇用保険・健康保険・厚生年金保険への加入状況が審査され、未加入の場合は1項目につき-40点の減点となっていました。これはもともと『加入で加点される』仕組みではなく、『未加入だと減点される』という減点項目です。今回の改正で、これら3項目は評価対象から除外されました。
背景には、令和2年(2020年)10月の建設業法改正により、社会保険への加入が建設業許可の要件となったことがあります。許可業者であれば社会保険に加入しているのが当然の状態となったため、経審で改めて審査する意義が薄れたのです。ただし、社会保険への加入が建設業許可の要件であることに変更はないため、引き続き加入している必要があります。
実務ではこういう相談が多い
『社会保険の項目がなくなると聞いたが、点数に影響はないのか?』というご質問をいただきます。従来の制度では社会保険は『加点項目』ではなく『未加入時の減点項目』でしたので、加入済みの事業者にとってはこの項目の削除による直接的な減点はありません。ただし、W点の算出式や評点全体への影響は項目の組み替えに伴って変わり得るため、最終的な影響は総合評定値P点全体で確認する必要があります。
制度改正による再審査とは?|施行前に受けた経審の考え方
制度改正による再審査とは、制度改正の施行日より前に結果通知書を受けた経審について、改正後の基準で評点を見直してもらうための申立てです(建設業法施行規則第20条第2項)。国土交通省近畿地方整備局の案内(大臣許可の場合)では、次のとおり整理されています。
| 項目 | 近畿地方整備局の案内(大臣許可の例) |
|---|---|
| 対象となる経審 | 申立日時点で結果通知書の有効期限(審査基準日から1年7か月後の日)が切れていないもの |
| 申立期限 | 令和8年7月1日から令和8年10月28日まで(書面は10月28日午後4時30分まで) |
| 対象となる改正項目 | 改正項目の一部に限る(保険加入の削除や就業履歴蓄積措置の見直しは対象外とされている) |
| 手数料・期間 | 手数料は不要。結果通知まで、書面は約30日、電子申請(JCIP)は約2週間 |
上記は国土交通大臣許可(近畿地方整備局)の運用です。大阪府知事許可の場合の申立期限・対象項目・手続は、大阪府の案内で必ず確認してください。再審査の対象になり得る場合は期限が迫っていますので、早めの確認をお勧めします。
2025年7月施行済み改正との合わせ技|資本性借入金でY点・X2点を底上げする
2026年7月の経審改正対策を考える際に、2025年7月に既に施行されている『資本性借入金の自己資本算入制度』も見落とせません。W点の対策と併せてP点の総合的な底上げを図ることが重要です。
資本性借入金とは
資本性借入金とは、一定の要件を満たす借入金を、経審上は負債ではなく自己資本として扱うことができる制度です。2025年(令和7年)7月1日以降の経営状況分析の申請から適用されています。
資本性借入金として認められるための4つの要件:
- 償還期間が5年超であること
- 期限一括償還であること(分割返済は不可)
- 配当可能利益に応じた金利設定になっていること
- 法的破綻時の劣後性が確保されていること
Y点・X2点への具体的な影響
資本性借入金を自己資本に算入することで、以下の指標が改善します。
| 影響を受ける指標 | 計算上の変化 | 評点への影響 |
|---|---|---|
| 負債回転期間 | 負債から控除 | Y点向上 |
| 自己資本対固定資産比率 | 自己資本に加算 | Y点向上 |
| 自己資本比率 | 自己資本に加算 | Y点向上 |
| 自己資本額 | 自己資本に加算 | X2点向上 |
特に、自己資本がマイナス(債務超過)に近い事業者にとっては、資本性借入金の活用でY点・X2点の大幅な改善が見込めるケースがあります。
実務ではこういう相談が多い
『金融機関から借りている既存の借入金を資本性借入金に切り替えられないか?』という相談がありますが、4つの要件(特に期限一括償還と劣後性の確保)をすべて満たす必要があるため、既存の借入金をそのまま転換できるわけではありません。金融機関との交渉や契約条件の変更が必要になるため、顧問の税理士・会計士と連携して検討することをお勧めします。
大阪府で経審を受ける建設業者が今すぐやるべき対策チェックリスト
改正はすでに施行されています。以下の項目を順番に確認・対応してください。
対策チェックリスト
- 自主宣言(職人いきいき宣言)の申請を行う:国土交通省ポータルサイトから申請可能。社内の責任者と実施時期を決めたうえで、次の決算日(審査基準日)より前に宣言する
- CCUSの運用状況を確認する:現場での就業履歴の蓄積が適切に行われているか点検し、加点要件を満たしているか再確認する
- 保有する建設機械を棚卸しする:不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャの追加を踏まえ、自社が保有する全ての建設機械をリストアップし、特定自主検査の有効期限を確認する
- 資本性借入金の活用を検討する:要件を満たす借入金がある場合は、経営状況分析で自己資本に算入できるか確認する
- 制度改正による再審査の対象か確認する:施行前に結果通知を受けた経審で、有効期限が切れていない場合は、許可行政庁の案内で申立期限を確認する
- 次回経審のスケジュールを逆算する:加点は審査基準日(決算日)時点の状態で判定されるため、決算日から逆算して宣言・体制整備を先に済ませる
よくある質問(FAQ)
Q. 経審のW点とは何ですか?
A. W点とは、経審の総合評定値P点を構成する5つの評点(X1・X2・Y・Z・W)のうち、その他の審査項目(社会性等)の評点のことです。労働福祉の状況、建設業の営業継続の状況、防災活動への貢献の状況、法令遵守の状況、建設業の経理の状況、研究開発の状況、建設機械の保有状況、国または国際標準化機構が定めた規格による認証の取得状況、若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況などを審査します。
Q. 改正後の基準はいつから適用されますか?
A. 施行日は令和8年(2026年)7月1日です。施行日前に結果通知を受けた経審については、制度改正による再審査の申立て制度が設けられています(対象項目は一部に限られます)。具体的な適用の扱いは、許可行政庁の案内を確認してください。
Q. 今から自主宣言をしても加点に間に合いますか?
A. 間に合います。加点の条件は『審査基準日(決算日)が宣言日以降』であることです。次の決算日より前に宣言を済ませれば、その決算を審査基準日とする経審から+5点の対象になります。逆に、決算日を過ぎてから宣言しても、その期の経審では加点されません。
Q. 社会保険の項目が削除されたので、未加入でも問題ありませんか?
A. いいえ。社会保険への加入は建設業許可の要件のままです。経審の審査項目から外れただけで、未加入の場合は許可の取得・維持そのものに支障が生じます。
Q. CCUSの加点が下がったので、CCUSをやめて自主宣言だけにしてもよいですか?
A. お勧めしません。自主宣言の宣言内容にはCCUSを活用した就業履歴の蓄積が含まれており、両制度は一体で設計されています。就業履歴の蓄積措置(最大10点)+自主宣言(+5点)の両輪で最大15点の配点を確保するのが基本戦略です。
Q. 制度改正による再審査は、どこに申し立てるのですか?
A. 申立先は現在の許可行政庁です。大臣許可の場合は地方整備局、大阪府知事許可の場合は大阪府が窓口になります。近畿地方整備局の案内では、申立期限は令和8年10月28日まで、手数料は不要とされています。知事許可の期限と手続は大阪府の案内でご確認ください。
まとめ|2026年7月経審改正はW点対策の見直しが必須
2026年7月1日に施行された経審改正は、W点を中心とした改正であり、建設業者の『技能者を大切にする姿勢』が評価に直結する時代への転換点です。
改正のポイントを改めて整理します。
- 自主宣言制度(職人いきいき宣言)が新設され、+5点の加点が受けられる(審査基準日が宣言日以降であることが条件)
- 就業履歴の蓄積措置の加点は民間含む全工事15点→10点、全公共工事10点→5点に引き下げ。自主宣言と合わせれば最大15点の配点を維持できる
- 建設機械の加点対象に不整地運搬車・アスファルト・フィニッシャが追加された
- 社会保険の未加入減点項目が削除された(許可要件化に伴う整理。加入義務自体は継続)
- 制度改正による再審査が設けられており、近畿地方整備局(大臣許可)の申立期限は令和8年10月28日まで
- 2025年7月施行の資本性借入金制度と合わせてP点全体の底上げが可能
次の決算日(審査基準日)が来る前の今こそ、自社の経審対策を見直す好機です。経審対策・入札参加資格のご相談は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
参考情報(一次情報)
本記事は2026年10月1日時点の情報に基づいています(大阪府知事許可を前提とした実務の解説です)。
最終更新日:2026年10月1日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄(行政書士ARISEリーガルオフィス)

