営業所技術者等(旧称:専任技術者)とは、建設業許可の要件として営業所ごとに常勤での配置が義務付けられる、許可業種に対応した資格または実務経験を持つ技術者のことです。要件を満たすルートは「国家資格」「指定学科卒業(技士補を含む)+実務経験」「実務経験10年以上」の3つで、いずれか1つを満たせば足ります。令和6年12月13日施行の改正建設業法で名称は『専任技術者』から『営業所技術者等』に変わり、同日から一定の要件を満たす場合に限って工事現場の主任技術者等との兼務も認められるようになりました。
営業所ごとに要件を満たす技術者を常勤で置けなければ、建設業許可の申請は進みません。
まず押さえたいのは、『資格がないから無理』ではない一方で、『現場歴が長いから通る』でもない、ということです。この記事では、要件の全体像と、なぜ行政書士に相談すべきなのかを実務目線で解説します。
この記事で分かること
- 営業所技術者等(専任技術者)の3つの要件ルート(資格・学歴・実務経験)
- 一般建設業と特定建設業で求められる要件の違い
- 実務経験10年の証明で行政書士が必要になる理由(様式第九号の書き方と空白期間の扱い)
- 令和5年7月施行の技士補による要件緩和と適用除外業種
- 令和6年12月施行の名称変更と、現場の主任技術者等を兼務できる特例の要件
営業所技術者等(専任技術者)とは?役割と常勤性の要件
結論:営業所ごとに常勤で配置しなければならない技術の責任者です。
建設業法第7条第2号(一般建設業)および第15条第2号(特定建設業)により、営業所ごとに一定の資格・経験を持つ技術者を専任で配置することが求められています。
ここでいう『専任』とは、その営業所に常勤し、専らその職務に従事することを意味します。建設業許可事務ガイドラインでは、以下に該当する者は原則として専任と認められないとされています。
- 住所が営業所から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
- 他の営業所や他の建設業者で専任を要する立場にある者
- 建築士事務所の管理建築士や専任の宅地建物取引士など、他法令で専任を要する者(ただし同一営業所内であれば兼任可)
- 他に個人営業を行っている者や、他の法人の常勤役員である者
実務ではこういう相談が多い
「知り合いの有資格者に名前だけ借りたい」というご相談を受けることがありますが、常勤性は年金記録や健康保険証で厳格に確認されます。名義貸しは虚偽申請として許可取消の対象になりますので、絶対に避けてください。
営業所技術者等になるには?【3つの要件ルート】
結論:国家資格・学歴+実務経験・実務経験のみ、の3ルートのいずれかを満たせば要件をクリアできます。
| ルート | 概要 | 実務経験の年数 |
|---|---|---|
| ルート1:国家資格 | 許可業種に対応する国家資格を保有 | 不要 |
| ルート2:学歴+実務経験 | 指定学科を卒業+一定年数の実務経験 | 大卒3年以上/高卒5年以上 |
| ルート3:実務経験のみ | 学歴・資格を問わず実務経験で証明 | 10年以上 |
ルート1でどの資格がどの業種に使えるかは業種ごとに細かく決まっています。大阪府知事許可であれば【許可・業種別有資格コード表】で、資格名とコード、対応業種、一般/特定の別まで確認できます。「1級を持っているから全業種いける」という誤解が多いところです。
なお、代表者が経営業務の管理責任者(常勤役員等)と営業所技術者等を同一営業所内で兼ねることは、要件を満たせば可能です。ただし、実務経験で複数業種を取りに行く場合、重複する期間は原則として二重計算できません。たとえば内装仕上工事と塗装工事の両方を10年の実務経験で証明しようとすると、合計20年の経験が必要です。こうした複雑な年数計算は、行政書士に任せるのが確実です。
特定建設業の営業所技術者等は何が違うのか?
結論:特定建設業では原則1級国家資格が必要であり、一般建設業とは別次元の要件です。
現行基準(令和7年2月1日施行の施行令改正後)では、元請として請け負った工事で下請に出す総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)になる場合に特定建設業許可が必要です。
特定建設業の営業所技術者等(特定営業所技術者)の要件は、業種によって異なります。
指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)では、1級国家資格者・技術士・大臣認定者のいずれかが必須です。実務経験のみでは認められません。
指定建設業以外の業種では、一般建設業の要件を満たしたうえで、元請として直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事に関する2年以上の指導監督的実務経験があれば認められます。この4,500万円は下請代金額の基準(5,000万円)とは別の数字ですので、混同しないよう注意が必要です。
実務ではこういう相談が多い
「特定建設業の許可を取りたいが、1級資格を持っている社員がいない」というご相談は多いです。指定建設業以外なら指導監督的実務経験ルートがありますが、対象工事の金額要件や証明書類の準備は複雑です。特定建設業を目指す場合は、早い段階で行政書士に要件の充足を確認することをお勧めします。
10年の実務経験はどうやって証明するのか?
結論:10年の実務経験は『やっていた事実』だけでは足りず、『在籍の証明』と『工事実績の証明』を書類で立証する必要があります。
これが営業所技術者等の要件確認のなかで最も難易度が高いポイントであり、行政書士に依頼する最大のメリットが出る部分です。
在籍証明には年金の被保険者記録照会回答票や雇用保険被保険者証など、工事実績には契約書・注文書・請求書などが使われます。これらを取りまとめた『実務経験証明書(様式第九号)』を作成して提出します。
大阪府では、様式第九号に書いた各年の代表的な工事について、工事名・工事内容・工期がわかる確認書類の提示がすべて必要です。そのうえで、確認する工事と翌年の工事との間隔が1年以上空いた場合は、その間に積み上げた同業種の他の工事の実績まで確認され、確認できない空白期間は実務経験の年数から除算されます(大阪府・令和6年11月1日運用開始の審査基準改定)。つまり、『だいたい10年やっていました』では通らず、『その10年を切れ目なく書類で立証できるか』が論点になります。
様式第九号の書き方も、通年で工事経験があるかどうかで変わります。
| ケース | 記載方法 | 年数の数え方 |
|---|---|---|
| 通年で建設工事の経験がある | その年の代表的な工事名に「他○件」を添えて、1年分を1行にまとめて記載できる | 1年として積み上げ |
| 通年では経験がない | 1件の工事ごとに積み上げて記載する | 片落ち計算(例:平成14年4月〜12月=8か月) |
さらに、無許可業者での経験を証明する場合は、実務経験年数分の工事について契約書・注文書等の原本提示が求められます。許可業者での経験であれば許可申請書の副本で比較的スムーズに進みますが、無許可業者の場合はハードルが格段に上がります。
こうした都道府県ごとの運用の違いを正確に把握し、最適な書類の組み合わせを戦略的に準備できるのは、日常的に申請業務を行っている行政書士です。
技士補(第一次検定合格)で実務経験は何年に短縮されるのか?
結論:1級の第一次検定合格者は合格後3年、2級の第一次検定合格者は合格後5年に短縮されます(令和5年7月1日施行)。ただし適用除外の業種があります。
| 区分 | みなし学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|---|
| 1級技士補(1級一次検定合格者) | 大学の指定学科卒業と同等 | 合格後3年以上 |
| 2級技士補(2級一次検定合格者) | 高校の指定学科卒業と同等 | 合格後5年以上 |
どの検定種目がどの指定学科とみなされるかも、国土交通省の資料で示されています。
| 技術検定種目 | 同等とみなす指定学科 |
|---|---|
| 土木施工管理・造園施工管理 | 土木工学 |
| 建築施工管理 | 建築学 |
| 電気工事施工管理 | 電気工学 |
| 管工事施工管理 | 機械工学 |
この緩和が使える立場と業種は、次のとおりです。
| 対象 | 技士補ルートの適用 |
|---|---|
| 一般建設業の営業所技術者等 | 適用あり(指定建設業7業種と電気通信工事業を除く) |
| 特定建設業の営業所技術者等 | 同様の扱い(指定建設業を除く) |
| 工事現場の主任技術者・監理技術者 | 同様の扱い(指定建設業を除く) |
たとえば機械器具設置工事業では、従来は建築学・機械工学・電気工学の指定学科卒業者以外は10年の実務経験が必要でしたが、建築・電気工事・管工事のいずれかの施工管理技術検定(第一次検定)に合格すれば、合格後3年(1級)または5年(2級)に短縮できます。『2級の一次検定に受かれば全業種5年でいける』わけではないので、自社の業種が対象かどうかを必ず確認してください。
営業所技術者等は工事現場の主任技術者等を兼務できるのか?
結論:令和6年12月13日施行の建設業法第26条の5により、情報通信機器の活用など下記の要件をすべて満たす場合に限り、1つの工事現場の主任技術者・監理技術者を兼務できます。
従来、営業所技術者等は営業所での職務に専任であることが求められ、専任が必要な工事現場の技術者を兼ねることはできませんでした。改正後は、生産性向上の観点から次の要件をすべて満たす場合に兼務が可能です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 工事契約 | その営業所技術者等が置かれている営業所で締結された建設工事であること(法) |
| 請負金額 | 1億円未満(建築一式工事は2億円未満)(政令) |
| 兼務できる現場数 | 1工事現場まで(政令) |
| 営業所と現場の距離 | 1日の勤務時間内に巡回可能で、移動時間がおおむね2時間以内(省令) |
| 下請次数 | 3次まで(省令) |
| 連絡員の配置 | 技術者との連絡等を行う者を現場に配置(土木一式・建築一式工事の場合は当該工事の実務経験1年以上の者)(省令) |
| 情報通信技術の措置 | 施工体制(作業員の入退場)を遠隔から確認できる措置(省令) |
| 計画書と情報通信機器 | 人員の配置を示す計画書を作成して現場に備え置き、営業所で保存。現場状況を確認できる映像・音声の情報通信機器を設置(省令) |
加えて、兼務する営業所技術者等は、その請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があります(監理技術者制度運用マニュアル)。また、この特例と建設業法第26条第3項ただし書(現場技術者どうしの兼任)を併用することはできません。
実務ではこういう相談が多い
「制度ができたなら、社長ひとりで営業所も現場も回せるのでは」というご相談を受けます。ただ、人員の配置を示す計画書には、その技術者の時間外労働の見込みと実績まで記載が求められます。書類上は兼務の形が作れても、実態が伴わなければ是正の対象です。兼務ありきで人員計画を組むのは避けてください。
行政書士に相談する前に整理しておきたい3点
行政書士への相談をスムーズに進めるために、以下の情報を事前に整理しておくと効果的です。
- 候補者の資格証:施工管理技士や建築士など、保有する国家資格の種別と等級(技士補=第一次検定合格の通知書も含む)
- 候補者の卒業証明書等:指定学科に該当する可能性がある場合
- 過去の工事関連書類:契約書・注文書・請求書等がどの程度残っているか
この3点があれば、どのルートで組むべきか、足りない書類は何か、何業種まで狙えるかをかなり現実的に判断できます。営業所技術者等は『後で何とかなる』分野ではありません。最初の見立てで9割決まります。
よくある質問(FAQ)
Q. 専任技術者と営業所技術者等は何が違いますか?
A. 中身は同じで、名称が変わりました。令和6年12月13日施行の改正建設業法により、従来の『専任技術者』は『営業所技術者等』(一般建設業の『営業所技術者』と特定建設業の『特定営業所技術者』の総称)に改められました。要件そのものが変わったわけではありません。
Q. 営業所技術者等が現場の主任技術者を兼務するには、何が必要ですか?
A. 建設業法第26条の5に基づき、①その営業所で契約した工事であること、②請負金額1億円未満(建築一式は2億円未満)、③兼務は1現場まで、④営業所から現場までの移動時間がおおむね2時間以内、⑤下請次数3次まで、⑥連絡員の配置、⑦施工体制を遠隔確認する情報通信技術の措置、⑧人員の配置を示す計画書の作成・備置きと現場確認用の情報通信機器の設置、のすべてを満たす必要があります。加えて、その会社との直接的かつ恒常的な雇用関係も求められます。
Q. 国家資格がなくても営業所技術者等になれますか?
A. なれます。許可を受けたい業種について10年以上の実務経験を書類で証明できれば、資格・学歴がなくても要件を満たせます。ただし在籍証明と工事実績の両方を切れ目なく立証する必要があり、書類準備の難易度は高めです。
Q. 1人の技術者で複数業種の営業所技術者等を兼ねられますか?
A. 資格で要件を満たす場合は、その資格が対応する複数業種を同一営業所内で1人で兼ねられます。実務経験で証明する場合は業種ごとに原則10年が必要で、経験期間の重複計算はできません。
Q. 実務経験の期間に空白があるとどうなりますか?
A. 大阪府では、確認する代表的な工事と翌年の工事との間隔が1年以上空いた場合、その間に積み上げた同業種の他の工事の実績が確認されます。確認できない空白期間は実務経験の年数から除算されるため、その分だけ必要年数に届かなくなります。工期がわかる書類を年ごとに揃えられるかが分かれ目です。
Q. 技士補による緩和は特定建設業や現場の主任技術者にも使えますか?
A. 国土交通省の資料では、特定建設業許可の営業所技術者等の要件や、工事現場に置く主任技術者・監理技術者についても同様の扱いとされています(いずれも指定建設業は除く)。一般建設業の営業所技術者等については、指定建設業7業種に加えて電気通信工事業も適用除外です。自社の業種と立場でどこまで使えるかは、申請先の行政庁に確認してください。
Q. 営業所技術者等が退職したら、許可はどうなりますか?
A. 後任がいないまま要件を欠いた状態が続くと、建設業法第29条第1項第1号により許可の取消し対象になります。後任を立てたうえで、事実発生から2週間以内に変更届を提出するのが原則です。退職の予定が分かった時点で、要件を満たす候補者の確保から逆算して動いてください。
まとめ
- 営業所技術者等(旧・専任技術者)には『資格』『学歴+実務経験』『実務経験10年』の3ルートがある
- 特定建設業では指定建設業7業種は1級国家資格が必須
- 実務経験の証明は都道府県ごとに運用が異なり、書類戦略が必要(大阪府は代表工事の確認書類が全件必要、空白期間は除算)
- 技士補による要件緩和は、一般建設業では指定建設業7業種+電気通信工事業には適用されない
- 令和6年12月13日から、8つの要件をすべて満たせば現場の主任技術者等との兼務が可能
- 常勤性の要件は厳格で、名義貸しは許可取消の対象
要件判断から書類作成まで、建設業許可に精通した行政書士に一括して依頼することで、許可取得までの時間と手間を大幅に削減できます。
営業所技術者等(専任技術者)の要件確認や建設業許可の申請は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
参考情報
- 国土交通省「許可の要件」
- 国土交通省「監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例」
- 国土交通省「実務経験による技術者資格要件の見直し」(令和5年7月1日施行)
- 大阪府「建設業許可の手引き」(令和8年3月改訂版・許可業種別有資格コード表)
最終更新日:2026年9月10日|監修:行政書士 伊敷紀巳雄(行政書士ARISEリーガルオフィス)

