建設業許可でよく止まるのが『専任技術者』の要件です。現在の法令上の正式名称は『営業所技術者等』ですが、実務では今でも『専技』と呼ばれています。営業所ごとに、許可業種に対応した資格や経験を持つ技術者を常勤で置く必要があり、ここを外すと申請は進みません。
まず押さえたいのは、『資格がないから無理』ではない一方で、『現場歴が長いから通る』でもない、ということです。この記事では、要件の全体像と、なぜ行政書士に相談すべきなのかを実務目線で解説します。
この記事で分かること
- 専任技術者の3つの要件ルート(資格・学歴・実務経験)
- 一般建設業と特定建設業で求められる専任技術者の違い
- 実務経験10年の証明で行政書士が必要になる理由
- 令和5年7月施行の技士補による要件緩和と適用除外業種
- 令和6年12月施行の名称変更と兼務制度の概要
専任技術者の役割と常勤性の要件
結論:営業所ごとに常勤で配置しなければならない技術の責任者です。
建設業法第7条第2号(一般建設業)および第15条第2号(特定建設業)により、営業所ごとに一定の資格・経験を持つ技術者を専任で配置することが求められています。
ここでいう『専任』とは、その営業所に常勤し、専らその職務に従事することを意味します。建設業許可事務ガイドラインでは、以下に該当する者は原則として専任と認められないとされています。
- 住所が営業所から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
- 他の営業所や他の建設業者で専任を要する立場にある者
- 建築士事務所の管理建築士や専任の宅地建物取引士など、他法令で専任を要する者(ただし同一営業所内であれば兼任可)
- 他に個人営業を行っている者や、他の法人の常勤役員である者
実務ではこういう相談が多い
「知り合いの有資格者に名前だけ借りたい」というご相談を受けることがありますが、常勤性は年金記録や健康保険証で厳格に確認されます。名義貸しは虚偽申請として許可取消の対象になりますので、絶対に避けてください。
3つの要件ルート|資格がなくても道はある
結論:国家資格・学歴+実務経験・実務経験のみ、の3ルートのいずれかを満たせば要件をクリアできます。
- ルート | 概要 | 実務経験の年数
- ルート1:国家資格 | 許可業種に対応する国家資格を保有 | 不要
- ルート2:学歴+実務経験 | 指定学科を卒業+一定年数の実務経験 | 大卒3年以上/高卒5年以上
- ルート3:実務経験のみ | 学歴・資格を問わず実務経験で証明 | 10年以上
なお、代表者が経営業務の管理責任者(常勤役員等)と専任技術者を同一営業所内で兼ねることは、要件を満たせば可能です。ただし、実務経験で複数業種を取りに行く場合、重複する期間は原則として二重計算できません。たとえば内装仕上工事と塗装工事の両方を10年の実務経験で証明しようとすると、合計20年の経験が必要です。こうした複雑な年数計算は、行政書士に任せるのが確実です。
特定建設業の専任技術者はさらにハードルが高い
結論:特定建設業では原則1級国家資格が必要であり、一般建設業とは別次元の要件です。
現行基準(令和7年2月1日施行の施行令改正後)では、元請として請け負った工事で下請に出す総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)になる場合に特定建設業許可が必要です。
特定建設業の営業所技術者等(特定営業所技術者)の要件は、業種によって異なります。
指定建設業7業種(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)では、1級国家資格者・技術士・大臣認定者のいずれかが必須です。実務経験のみでは認められません。
指定建設業以外の業種では、一般建設業の要件を満たしたうえで、元請として直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事に関する2年以上の指導監督的実務経験があれば認められます。この4,500万円は下請代金額の基準(5,000万円)とは別の数字ですので、混同しないよう注意が必要です。
実務ではこういう相談が多い
「特定建設業の許可を取りたいが、1級資格を持っている社員がいない」というご相談は多いです。指定建設業以外なら指導監督的実務経験ルートがありますが、対象工事の金額要件や証明書類の準備は複雑です。特定建設業を目指す場合は、早い段階で行政書士に要件の充足を確認することをお勧めします。
10年実務経験の証明|行政書士に依頼すべき最大の理由
結論:10年の実務経験は『やっていた事実』だけでは足りず、『在籍の証明』と『工事実績の証明』を書類で立証する必要があります。
これが専任技術者の要件確認のなかで最も難易度が高いポイントであり、行政書士に依頼する最大のメリットが出る部分です。
在籍証明には年金の被保険者記録照会回答票や雇用保険被保険者証など、工事実績には契約書・注文書・請求書などが使われます。これらを取りまとめた『実務経験証明書(様式第九号)』を作成して提出します。
大阪府では、各年の代表的な工事と翌年の工事との間隔が12か月以上空くと、その空白部分は実務経験にカウントされません。つまり、『だいたい10年やっていました』では通らず、『その10年を切れ目なく書類で立証できるか』が論点になります。
さらに、無許可業者での経験を証明する場合は、実務経験年数分の工事について契約書・注文書等の原本提示が求められます。許可業者での経験であれば許可申請書の副本で比較的スムーズに進みますが、無許可業者の場合はハードルが格段に上がります。
こうした都道府県ごとの運用の違いを正確に把握し、最適な書類の組み合わせを戦略的に準備できるのは、日常的に申請業務を行っている行政書士です。
令和5年7月の技士補による要件緩和|ただし適用除外に注意
結論:施工管理技士の第一次検定合格者(技士補)が指定学科卒業者と同等に扱われるようになりましたが、適用除外の業種があります。
- 区分 | みなし学歴 | 必要な実務経験
- 1級技士補 | 大学の指定学科卒業と同等 | 合格後3年以上
- 2級技士補 | 高校の指定学科卒業と同等 | 合格後5年以上
ただし、この緩和は一般建設業の営業所技術者等に限定されます。また、指定建設業7業種および電気通信工事業の計8業種は適用除外です。『2級の一次検定に受かれば全業種5年でいける』わけではありません。自社の業種が対象かどうか、行政書士に確認してください。
行政書士に相談する前に整理しておきたい3点
行政書士への相談をスムーズに進めるために、以下の情報を事前に整理しておくと効果的です。
- 候補者の資格証:施工管理技士や建築士など、保有する国家資格の種別と等級
- 候補者の卒業証明書等:指定学科に該当する可能性がある場合
- 過去の工事関連書類:契約書・注文書・請求書等がどの程度残っているか
この3点があれば、どのルートで組むべきか、足りない書類は何か、何業種まで狙えるかをかなり現実的に判断できます。専任技術者は『後で何とかなる』分野ではありません。最初の見立てで9割決まります。
まとめ
- 専任技術者には『資格』『学歴+実務経験』『実務経験10年』の3ルートがある
- 特定建設業では指定建設業7業種は1級国家資格が必須
- 実務経験の証明は都道府県ごとに運用が異なり、書類戦略が必要
- 技士補による要件緩和は指定建設業7業種+電気通信工事業には適用されない
- 常勤性の要件は厳格で、名義貸しは許可取消の対象
要件判断から書類作成まで、建設業許可に精通した行政書士に一括して依頼することで、許可取得までの時間と手間を大幅に削減できます。
専任技術者の要件確認や建設業許可の申請は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
