令和7年(2025年)2月1日、建設業法施行令の一部改正が施行され、特定建設業許可に関する金額要件が引き上げられました。
『うちは今まで特定建設業許可が必要だったが、改正後は一般で済むのか?』『逆に、そろそろ特定が必要になるのか?』。改正の前後で判断が変わる事業者は少なくありません。
この記事では、改正後の金額要件を整理したうえで、あなたの会社に特定建設業許可が必要かどうかを判断するための5つのポイントを解説します。
この記事で分かること
- 特定建設業許可と一般建設業許可の違い(改正後の金額基準)
- 2025年2月改正で何が変わったのか(新旧対照表)
- あなたの会社はどちらの許可が必要か(判断フローチャート)
- 特定建設業許可の財産要件(4つの基準)
- 改正に伴い対応が必要なケース・不要なケース
特定建設業許可と一般建設業許可の違い|2025年2月改正後の基準
建設業許可には、『一般建設業許可』と『特定建設業許可』の2種類があります(建設業法第3条第1項)。この区分は、元請として下請業者に発注する金額の大きさによって決まります。
改正後の区分基準
特定建設業許可が必要な場合:
発注者から直接請け負った1件の工事について、下請代金の合計額が5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)となる下請契約を締結する場合
一般建設業許可で足りる場合:
上記に該当しない場合(下請に出さない場合、または下請代金の合計額が上記の金額未満の場合)
ここで重要なのは、この金額基準は『自社が元請として下請に出す金額』であるという点です。下請専門の業者であれば、受注金額がいくら大きくても一般建設業許可で足ります。
2025年2月改正で何が変わったのか|新旧対照表
主要な金額要件の変更一覧
- 項目 | 改正前(~2025年1月31日) | 改正後(2025年2月1日~)
- 特定建設業許可が必要な下請代金額 | 4,500万円以上 | 5,000万円以上
- 同上(建築一式工事) | 7,000万円以上 | 8,000万円以上
- 施工体制台帳の作成義務が生じる下請代金額 | 4,500万円以上 | 5,000万円以上
- 同上(建築一式工事) | 7,000万円以上 | 8,000万円以上
- 監理技術者の専任配置が必要な請負代金額 | 4,000万円以上 | 5,000万円以上
- 同上(建築一式工事) | 8,000万円以上 | 1億円以上
改正の背景
近年の建設資材価格や人件費の高騰により、工事金額が全体的に上昇しています。従来の金額基準のままでは、実態として中規模の工事でも特定建設業許可や監理技術者の専任配置が必要となるケースが増え、人手不足の建設業界に過度な負担がかかっていました。
この改正は、金額基準を実態に合わせて見直すことで、建設業者の負担を適正化することを目的としています。
実務ではこういう相談が多い
『改正で金額が上がったから、うちは特定建設業許可が不要になるのでは?』という相談をいただくことがあります。しかし、すでに特定建設業許可を取得している場合に、わざわざ一般建設業許可に切り替える必要はありません。特定建設業許可は一般建設業許可の上位互換であり、一般建設業で行える工事はすべて対応できます。ただし、特定建設業許可の更新時に財産要件を満たせなくなった場合は、一般建設業許可への変更を検討する必要が出てきます。
あなたの会社はどちらの許可が必要か|判断フローチャート
以下のフローに沿って、あなたの会社に必要な許可の種類を確認してください。
ステップ1:元請として工事を受注しているか?
- いいえ → 下請専門であれば一般建設業許可で足ります
- はい → ステップ2へ
ステップ2:元請として受注した工事を下請に出しているか?
- いいえ → 自社施工のみであれば一般建設業許可で足ります
- はい → ステップ3へ
ステップ3:1件の工事で下請に出す合計金額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)になることがあるか?
- いいえ → 一般建設業許可で足ります
- はい → 特定建設業許可が必要です
判断時の注意点
- 下請代金の『合計額』で判断します。1社あたりの金額ではなく、1件の工事における下請代金の総額です
- 金額は消費税を含んだ税込金額で判断します
- 元請として下請に出す可能性が将来的にある場合は、あらかじめ特定建設業許可を取得しておくことが実務上は安全です
- 許可業種ごとに一般・特定の区分が異なります(例:土木一式は特定、電気工事は一般、ということもあり得ます)
特定建設業許可の財産要件|4つの基準すべてを満たす必要がある
特定建設業許可には、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件があります(建設業法第15条第3号、施行規則第7条の2)。以下の4つの基準をすべて満たさなければなりません。
- 基準 | 内容 | 具体的な数値
- 資本金 | 払込資本金の額 | 2,000万円以上
- 純資産 | 貸借対照表の純資産合計 | 4,000万円以上
- 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 75%以上
- 欠損比率 | 繰越利益剰余金がマイナスの場合の比率 | 20%以下
一般建設業許可の財産要件(500万円以上の自己資本または資金調達能力)は新規申請時のみ審査されますが、特定建設業許可の財産要件は許可の更新ごと(5年ごと)に審査されます。
実務ではこういう相談が多い
『新規申請時は基準を満たしていたが、更新時に純資産が4,000万円を下回ってしまった』というケースは珍しくありません。更新時に財産要件を満たせなければ、特定建設業許可の更新はできません。決算期の1〜2年前から財務状況を確認し、必要に応じて増資や利益計画の見直しを行うことが重要です。更新直前になって慌てても、決算数値は簡単には改善できません。
改正に伴い対応が必要なケース・不要なケース
対応が必要なケース
- 下請代金が4,500万円〜5,000万円未満の工事を元請として行っている場合 → 改正前は特定建設業許可が必要でしたが、改正後は一般建設業許可で対応可能に。ただし、今後の工事規模拡大を見据えるなら、特定許可の維持が安全です
- 監理技術者の専任配置が4,000万円以上で必要だった場合 → 改正後は5,000万円以上に引き上げ。対象外となった工事での人員配置を見直せる可能性があります
- 施工体制台帳の作成基準に該当していた場合 → 4,500万円から5,000万円に引き上げ。下回る場合は作成義務がなくなります
対応が不要なケース
- すでに特定建設業許可を取得しており、今後も5,000万円以上の下請契約を締結する可能性がある場合 → 許可の変更は不要。そのまま特定建設業許可を維持してください
- 下請専門で元請工事を行わない場合 → 今回の改正は直接の影響なし。引き続き一般建設業許可で対応可能です
まとめ
2025年2月1日の建設業法施行令改正により、特定建設業許可が必要となる下請代金額は5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)に引き上げられました。
確認すべきチェックリスト:
- 自社が元請として下請に出す金額が改正後の基準に照らしてどう位置づけられるか確認したか
- 特定建設業許可の財産要件(資本金2,000万円以上、純資産4,000万円以上、流動比率75%以上、欠損比率20%以下)を直近の決算で満たしているか
- 監理技術者の専任配置基準の変更が、自社の技術者配置に影響するか検討したか
- 施工体制台帳の作成義務の変更が、自社の工事に影響するか確認したか
- 次回の許可更新時期と財産要件の充足状況を確認したか
建設業許可(一般・特定)の新規取得・更新・業種追加のご相談は、行政書士ARISEリーガルオフィスまでお気軽にどうぞ。
