【結論】令和7年(2025年)2月1日施行の建設業法施行令改正により、特定建設業許可が必要となる下請代金の下限は4,500万円から5,000万円(建築一式工事は7,000万円から8,000万円)に引き上げられました。この金額は、発注者から直接請け負った1件の工事について下請に出す額の合計(税込み)で判断し、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。そして実務上の本当の関門は金額基準ではなく、1級国家資格者などに限られる特定営業所技術者と、資本金2,000万円・自己資本4,000万円などを更新ごとに審査される財産要件の2つです。
『うちは今まで特定建設業許可が必要だったが、改正後は一般で済むのか?』『逆に、そろそろ特定が必要になるのか?』。改正の前後で判断が変わる事業者は少なくありません。
この記事では、改正後の金額要件を整理したうえで、あなたの会社に特定建設業許可が必要かどうかを判断するための5つのポイントと、実際に一般から特定へ切り替えるときの要件・手続き・費用まで解説します。大阪府知事許可を前提に、2026年9月24日時点の情報で整理しています。
この記事で分かること
- 特定建設業許可と一般建設業許可の違い(改正後の金額基準)
- 2025年2月改正で何が変わったのか(新旧対照表)
- 金額の数え方で間違いやすい5つのポイント(材料費・孫請け・税込)
- あなたの会社はどちらの許可が必要か(判断フローチャート)
- 特定営業所技術者の要件(指定建設業7業種は実務経験ルートが使えない)
- 特定建設業許可の財産要件(4つの基準)
- 特定建設業者になると増える4つの義務(施工体制台帳・50日ルールなど)
- 一般から特定へ切り替える手続きと費用(般・特新規/大阪府の手数料)
特定建設業許可とは?一般建設業許可との違い【2025年2月改正後の基準】
特定建設業許可とは、発注者から直接請け負った工事(元請工事)について、下請に施工させる額の合計が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となる下請契約を締結する場合に必要となる許可です(建設業法第3条第1項第2号)。一般建設業許可とは、それ以外の場合に受ける許可です。つまりこの区分は、元請として下請業者に発注する金額の大きさだけで決まります。
一般建設業許可と特定建設業許可はどこが違うのか【比較表】
| 比較項目 | 一般建設業許可 | 特定建設業許可 |
|---|---|---|
| 区分の分かれ目 | 下請に出す合計額が5,000万円未満(建築一式8,000万円未満) | 下請に出す合計額が5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) |
| 発注者から受注できる金額 | 制限なし | 制限なし |
| 下請として受注できる金額 | 制限なし | 制限なし |
| 営業所技術者等 | 営業所技術者(実務経験10年ルート等も可) | 特定営業所技術者(原則1級等の国家資格者) |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上など、いずれか1つ | 4つの基準をすべて充足(更新ごとに審査) |
| 追加される義務 | — | 施工体制台帳の作成、下請指導、下請代金の50日ルールなど |
| 大阪府知事許可の手数料(新規) | 90,000円 | 90,000円(一般と特定を同時に新規申請する場合は180,000円) |
ここで重要なのは、金額基準が『自社が元請として下請に出す金額』であるという点です。下請専門の業者であれば、受注金額がいくら大きくても一般建設業許可で足ります。
金額の数え方で間違いやすい5つのポイント
| ポイント | 正しい取扱い |
|---|---|
| 消費税 | 消費税・地方消費税を含む税込金額で判断します |
| 元請が支給する材料 | 5,000万円(建築一式8,000万円)に元請負人が提供する材料等の価格は含みません。500万円の軽微な建設工事の判定では逆に支給材料の市場価格を加算するため、混同しやすい点です |
| 1社あたりか合計か | 1社あたりではなく、その工事における下請代金の合計額で判断します |
| 下請が孫請けに出す額 | 下請負人がさらに孫請負人に施工させる額が5,000万円以上であっても、その下請負人は特定建設業許可を受ける必要はありません |
| 発注者からの受注額 | 一般・特定にかかわらず制限はありません。1件が大きな工事でも、大半を自社施工して下請総額が基準未満なら一般建設業許可で差し支えありません |
2025年2月改正で何が変わったのか|新旧対照表
主要な金額要件の変更一覧
| 金額要件 | 改正前(〜2025年1月31日) | 改正後(2025年2月1日〜) |
|---|---|---|
| 特定建設業許可を要する下請代金額の下限 | 4,500万円 (建築一式:7,000万円) | 5,000万円 (建築一式:8,000万円) |
| 施工体制台帳等の作成を要する下請代金額の下限 | 4,500万円 (建築一式:7,000万円) | 5,000万円 (建築一式:8,000万円) |
| 専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限 | 4,000万円 (建築一式:8,000万円) | 4,500万円 (建築一式:9,000万円) |
| 特定専門工事の対象となる下請代金額の上限 | 4,000万円 | 4,500万円 |
※国土交通省の政令改正(令和6年12月6日閣議決定・令和7年2月1日施行)に基づく金額です。いずれも税込金額です。
改正の背景
近年の建設資材価格や人件費の高騰により、工事金額が全体的に上昇しています。従来の金額基準のままでは、実態として中規模の工事でも特定建設業許可や監理技術者の専任配置が必要となるケースが増え、人手不足の建設業界に過度な負担がかかっていました。
この改正は、金額基準を実態に合わせて見直すことで、建設業者の負担を適正化することを目的としています。
実務ではこういう相談が多い
『改正で金額が上がったから、うちは特定建設業許可が不要になるのでは?』という相談をいただくことがあります。しかし、すでに特定建設業許可を取得している場合に、わざわざ一般建設業許可に切り替える必要はありません。特定建設業許可は一般建設業許可の上位互換であり、一般建設業で行える工事はすべて対応できます。ただし、特定建設業許可の更新時に財産要件を満たせなくなった場合は、一般建設業許可への変更を検討する必要が出てきます。
あなたの会社はどちらの許可が必要か|判断フローチャート
以下のフローに沿って、あなたの会社に必要な許可の種類を確認してください。
ステップ1:元請として工事を受注しているか?
- いいえ → 下請専門であれば一般建設業許可で足ります
- はい → ステップ2へ
ステップ2:元請として受注した工事を下請に出しているか?
- いいえ → 自社施工のみであれば一般建設業許可で足ります
- はい → ステップ3へ
ステップ3:1件の工事で下請に出す合計金額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)になることがあるか?
- いいえ → 一般建設業許可で足ります
- はい → 特定建設業許可が必要です
判断時の注意点
- 下請代金の『合計額』で判断します。1社あたりの金額ではなく、1件の工事における下請代金の総額です
- 金額は消費税を含んだ税込金額で判断し、元請が支給する材料等の価格は含めません
- 元請として下請に出す可能性が将来的にある場合は、あらかじめ特定建設業許可を取得しておくことが実務上は安全です
- 許可業種ごとに一般・特定の区分が異なります(例:土木一式は特定、電気工事は一般、ということもあり得ます)。ただし同じ1業種について一般と特定を重複して受けることはできません
特定営業所技術者になれるのは誰か?【指定建設業7業種に注意】
特定営業所技術者とは、特定建設業許可を受ける営業所ごとに専任で置かなければならない技術者のことです(建設業法第15条第2号。令和6年12月13日施行の改正前は「専任技術者」と呼ばれていました)。一般建設業の営業所技術者よりも要件が重く、原則として1級の国家資格者等に限られます。
| ルート | 内容 | 指定建設業7業種 |
|---|---|---|
| ①国家資格者 | 1級建築施工管理技士・1級土木施工管理技士・1級建築士・技術士など、業種ごとに定められた資格を持つ者 | ○ 利用可 |
| ②指導監督的実務経験 | 一般建設業の営業所技術者の要件を満たし、かつ発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を持つ者 | × 利用不可 |
| ③大臣特別認定者 | 指定建設業制度の導入時に特別認定講習・考査に合格した者(現在は実施されていません) | ○ 利用可 |
指定建設業とは、施工技術の総合性などを勘案して政令で定められた7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)のことです(建設業法施行令第5条の2)。この7業種で特定建設業許可を受ける場合は、②の実務経験ルートが使えず、1級国家資格者等を確保することが必須になります。
『指導監督的な実務経験』とは、工事の設計・施工の全般にわたり、工事現場主任や現場監督者のような立場で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいいます。単に現場にいた経験では足りず、契約書・注文書などで請負代金4,500万円以上の元請工事であったことを証明する必要があります。
特定建設業許可の財産要件は?4つの基準すべてを満たす必要がある
特定建設業許可には、一般建設業許可よりも厳しい財産的基礎の要件があります(建設業法第15条第3号)。以下の4つの基準を、原則として申請直前の決算期の財務諸表ですべて満たさなければなりません。
| 基準 | 内容 | 具体的な数値 |
|---|---|---|
| 資本金 | 払込資本金の額 | 2,000万円以上 |
| 自己資本 | 貸借対照表の純資産合計 | 4,000万円以上 |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 | 75%以上 |
| 欠損比率 | 欠損の額が資本金に占める割合 | 20%以下 |
一般建設業許可の財産要件(500万円以上の自己資本または資金調達能力など)は新規申請時に審査されますが、特定建設業許可の財産要件は許可の更新ごと(5年ごと)に改めて審査されます。これが加重されている理由は、特定建設業者が多くの下請負人を使用して施工するのが一般的であり、発注者から支払を受けていなくても下請代金を期限内に支払う義務を負うためです。
実務ではこういう相談が多い
『新規申請時は基準を満たしていたが、更新時に純資産が4,000万円を下回ってしまった』というケースは珍しくありません。更新時に財産要件を満たせなければ、特定建設業許可の更新はできません。決算期の1〜2年前から財務状況を確認し、必要に応じて増資や利益計画の見直しを行うことが重要です。更新直前になって慌てても、決算数値は簡単には改善できません。
特定建設業者になると何が増えるのか?4つの義務
特定建設業許可は『取れば終わり』ではありません。元請として大きな下請契約を結ぶ立場になるため、下請保護と施工管理のための義務が加わります。
| 義務 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 監理技術者の配置 | 下請代金の合計が5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の工事では、主任技術者に代えて監理技術者を置く | 法第26条第2項 |
| 施工体制台帳・施工体系図の作成 | 同じく下請代金合計5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)の工事で、施工体制台帳を現場ごとに備え置き、施工体系図を掲示する | 法第24条の8 |
| 下請負人への指導 | 下請負人が建設業法や労働関係法令に違反しないよう指導し、違反があれば是正を求める | 法第24条の7 |
| 下請代金の50日ルール | 下請負人(特定建設業者・資本金4,000万円以上の法人を除く)から引渡しの申出があった日から50日以内のできる限り短い期間で支払期日を定めて支払う。割引困難な手形による支払も禁止 | 法第24条の6 |
なお、公共工事では金額にかかわらず、下請契約を結んだ元請負人に施工体制台帳の作成義務があります(公共工事入札契約適正化法第15条)。
一般から特定へ切り替えるには?手続きと費用
すでに一般建設業許可を持っている業種を特定建設業許可に切り替える手続きを『般・特新規』といいます。同じ業種で一般と特定を重複して持つことはできないため、特定の許可が下りた時点で、その業種の一般建設業許可は効力を失います(逆に特定から一般へ切り替える場合も般・特新規です)。
| 申請区分(大阪府知事許可) | 手数料 |
|---|---|
| 般・特新規 | 90,000円 |
| 般・特新規+他業種の更新(または業種追加) | 140,000円 |
| 新規で一般と特定を同時に申請 | 180,000円 |
※大阪府『大阪府手数料(Pos)納付用連絡票』掲載の金額です。大臣許可の場合は取扱いが異なります。
切替えの準備で最初に確認すべきなのは、①特定営業所技術者になれる人がいるか(指定建設業なら1級資格者)、②直前の決算で財産要件の4基準を満たしているか、の2点です。資本金が不足する場合は、申請までに増資することで資本金基準は満たすものと扱われますが、自己資本(純資産)や流動比率は決算の数字で判断されるため、決算前からの準備が欠かせません。
改正に伴い対応が必要なケース・不要なケース
| ケース | 改正後の扱い |
|---|---|
| 下請代金4,500万〜5,000万円未満の元請工事を行っている | 改正後は一般建設業許可で対応可能。ただし今後の工事規模拡大を見据えるなら特定許可の維持が安全 |
| 請負代金4,000万〜4,500万円未満の工事で技術者を専任配置していた | 改正後は専任不要(建築一式は8,000万円以上→9,000万円以上に引上げ)。人員配置を見直せる可能性あり |
| 下請代金4,500万〜5,000万円未満の工事で施工体制台帳を作っていた | 民間工事では作成義務がなくなる(公共工事は金額にかかわらず必要) |
| すでに特定許可があり、今後も5,000万円以上の下請契約の可能性がある | 変更不要。そのまま維持 |
| 下請専門で元請工事を行わない | 直接の影響なし。引き続き一般建設業許可で対応可能 |
よくある質問(FAQ)
Q. 金額基準は税込・税抜どちらで判断しますか?
A. 消費税を含む税込金額で判断します。1件の元請工事における下請代金の合計額が税込5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)となるかどうかが基準です。元請が支給する材料の価格は含めません。
Q. 下請専門ですが、受注額が1億円を超えても一般建設業許可のままで大丈夫ですか?
A. はい、問題ありません。特定建設業許可の基準は『元請として下請に出す金額』であり、下請として受注する金額に上限はありません。受注した工事をさらに孫請に出す場合も、その下請業者に特定建設業許可は不要です。
Q. 改正で基準を下回った場合、特定から一般に切り替えるべきですか?
A. 必ずしも切り替える必要はありません。特定建設業許可は一般建設業許可の上位互換のため、そのまま維持するのが原則です。ただし、更新時に財産要件(資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上など)を満たせない見込みがある場合は、一般建設業許可への切替え(般・特新規)を検討します。
Q. 1級資格者がいなくても、実務経験で特定建設業許可は取れますか?
A. 指定建設業7業種(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園)以外であれば、請負代金4,500万円以上の元請工事で2年以上の指導監督的実務経験があれば可能です。指定建設業7業種では実務経験ルートは使えず、1級国家資格者等が必要です。
Q. 監理技術者はいくらの工事から必要ですか?主任技術者との違いは何ですか?
A. 元請として下請代金合計5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)の工事を施工する場合は監理技術者を、それ未満の工事では主任技術者を配置します。さらに、請負代金4,500万円以上(建築一式工事は9,000万円以上)の重要な工事では、これらの技術者を原則として工事現場ごとに専任で配置する必要があります。詳しくは主任技術者・監理技術者の配置要件で解説しています。
まとめ
2025年2月1日の建設業法施行令改正により、特定建設業許可が必要となる下請代金額は5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)に引き上げられました。判断の基準は『元請として下請に出す金額の合計』であり、実務上の関門は特定営業所技術者と財産要件です。
確認すべきチェックリスト:
- 自社が元請として下請に出す金額が、改正後の基準に照らしてどう位置づけられるか確認したか
- 特定営業所技術者になれる人(指定建設業なら1級資格者)が社内にいるか
- 特定建設業許可の財産要件(資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上、流動比率75%以上、欠損比率20%以下)を直近の決算で満たしているか
- 監理技術者等の専任配置基準の変更(4,500万円以上/建築一式9,000万円以上)が自社の技術者配置に影響するか検討したか
- 施工体制台帳の作成義務・下請代金の50日ルールに社内体制が対応できているか
- 次回の許可更新時期と財産要件の充足状況を確認したか
参考:国土交通省「許可の要件」/国土交通省 報道発表「建設業の各種金額要件を見直します」/大阪府「大阪府手数料(Pos)納付用連絡票」
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最終更新日:2026年9月24日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄(行政書士ARISEリーガルオフィス)

