【結論】特定金属くず買受業とは、主として銅で構成される金属くず(切断された銅線ケーブルなど)を買い受ける営業のことで、2026年(令和8年)6月1日施行の金属盗対策法により、営業所ごとに管轄警察署を経由して公安委員会への届出(手数料なし)が義務になりました。大阪府金属くず営業条例の許可を持っている事業者でも、銅くずを買い受けるなら別途この届出が必要で、届出をせずに営業すると6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金(併科あり)の対象です。届出後は、顔写真付き身分証による本人確認、本人確認記録・取引記録の3年保存、営業所とウェブサイトへの届出番号等の表示、盗品疑いの警察申告が実務上の義務になります。
はじめに
銅線ケーブルなどの金属盗が社会問題化したことを受け、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号)、いわゆる金属盗対策法が整備されました。
この法律により、主として銅からなる金属くずなどを買い受ける事業者は、特定金属くず買受業として届出、本人確認、記録保存などの対応が必要になります。
特定金属くず買受業とは?
特定金属くず買受業とは、特定金属くずの買受けを行う営業のことです。特定金属とは、その金属で製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属として法律・政令で定められたもので、2026年10月時点では銅のみが指定されています。警察庁は「現時点では」主として銅により構成される金属くずが対象と整理しており、今後対象が見直される可能性があるため、取扱品目は定期的に確認しておくと安心です。
特定金属くずとは、主として特定金属(銅)により構成される金属くずのことで、製造過程で発生するものや、古物営業法上の古物に該当するものは除かれます。判断の目安は「本来の用法で使用できるかどうか」で、大阪府警の資料では、切断された銅線や破壊された室外機は本来の用途で使用不可能なため特定金属くずに当たると整理されています(使用可能なものは古物営業法の対象)。
銅くずなどを継続的に買い受ける事業者は、自社の取扱品目が制度対象に入るかを確認する必要があります。
大阪で届出が必要になるのはどんなケースか?
大阪府警は、大阪府金属くず営業条例による金属くず商許可を持っている事業者であっても、特定金属、特に銅くずを買い受ける営業をしている場合は、別途届出が必要と案内しています。条例の許可がないまま営業すれば条例の「無許可営業」、許可があっても法の届出をしていなければ法の「無届営業」になります。
届出先は、原則として営業所ごとに、その所在地を管轄する警察署です。大阪府内に複数の営業所がある場合は、同時に届け出る場合に限り、いずれかの営業所所在地を管轄する警察署にまとめて提出できます。他府県の営業所に係る届出は大阪では受理されません。
なお、大阪府警の案内では届出手数料は不要とされています。許可制ではなく届出制のため、審査期間や許可証はなく、届出番号が付与されます。
届出の期限はいつまでか?【経過措置は終了】
| 手続き | 様式 | 期限 |
|---|---|---|
| 営業開始届出 | 別記様式第1号 | 営業開始の前日まで |
| 届出事項変更届出 | 別記様式第3号 | 事由発生から14日以内(登記事項証明書の添付が必要な場合は20日以内) |
| 営業廃止届出 | 別記様式第2号 | 事由発生から14日以内 |
| 施行日(2026年6月1日)時点で既に営業していた事業者 | 別記様式第1号 | 2026年8月31日まで(経過措置・終了済み) |
2026年6月1日時点ですでに営業していた事業者向けの3か月の経過措置は2026年8月31日で終了しています。まだ届出をしていない場合は、現在すでに無届営業の状態にあるため、直ちに管轄警察署へ届け出てください。なお、本人確認や記録作成の義務は経過措置に関係なく2026年6月1日から発生しています。
営業開始時の必要書類は何か?【個人・法人別一覧】
| 書類 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 営業開始届出書(別記様式第1号) | ○ | ○ |
| 定款 | − | ○ |
| 登記事項証明書 | − | ○ |
| 住民票の写し(本籍地記載あり・個人番号省略) | ○(営業者本人) | ○(法人代表者) |
| 営業所の平面図および保管場所の平面図 | ○ | ○ |
| 営業所および保管場所周辺の略図(位置関係が分かるもの) | ○ | ○ |
営業所と保管場所が同じ敷地内にある場合は、営業所の平面図に保管場所を記載すれば足りるとされています。様式と記載例は大阪府警のページからダウンロードできます。
変更・廃止の届出
届出事項に変更がある場合は、届出事項変更届出書と、変更内容に応じた証明書類が必要です。たとえば法人名を変更した場合は、登記事項証明書が例示されています。
注意点として、営業所を移転する場合は単なる変更届ではなく、廃止届を提出したうえで新たに開始届が必要とされています。
営業所を廃止した場合は、営業廃止届出書を提出します。
届出後に必要な実務対応
1. 本人確認
特定金属くずの買受けを行う際には、相手方の本人確認が必要です。自然人との対面取引では、運転免許証、在留カード、マイナンバーカードなど、顔写真付き本人確認書類の提示を受ける方法が代表例です。写真付き書類で住所・氏名・年齢を確認します。
非対面(オンライン等)の取引では、指定されたソフトウェアを使って本人確認用の画像情報の送信を受ける方法が案内されています。
法人取引では、取引担当者の本人確認に加え、法人確認も必要になります。登記事項証明書や印鑑登録証明書の提示を受ける方法などが案内されています。持ち込む者が単なる運送業者で代金の授受をしない場合は、運送業者ではなく委託元の本人確認を別途行います。回収業者に本人確認を委託することもできますが、不備があれば委託元の買受業者の責任になります。
例外として、本人確認記録に記録済みの相手方との2回目以降の取引で、代金をその者の口座振込で支払う場合は本人確認を省略できます(同一人であることの確認と、氏名・日時・口座番号の記録・3年保存は必要)。
2. 本人確認記録の作成・保存
本人確認記録は、文書または電磁的記録で作成できます。大阪府警の概要では、本人確認記録はその都度直ちに作成し、3年間保存すると説明されています。提示を受けた免許証や登記事項証明書の写しを添付すると、記載事項の一部を省略できます。
3. 取引記録の作成・保存
特定金属くずを買い受けた場合、相手方の氏名または名称、買受けの日時、量、特徴(写真撮影も可)、価額、代金の支払方法などの取引記録を作成し、3年間保存する必要があります。
4. 届出番号等の表示
届出後は、営業所ごとに公衆の見やすい場所へ、氏名または名称、届出をした公安委員会の名称、届出番号を明瞭に表示する義務があります。決まった標識様式はなく、大阪府警はA4・16ポイント以上の明朝体またはゴシック体を推奨しています。常時使用する従業者が5人以下の場合やウェブサイトを持たない場合を除き、自社ウェブサイトのトップページ等にも表示が必要です。
5. 盗品疑いがある場合の申告
本人確認を拒否する、持ち込み内容が不自然であるなど、盗品に由来する疑いがある場合は、警察への申告が求められます(#9110または110番)。
金属盗対策法と大阪府金属くず営業条例はどう違うか?
| 項目 | 大阪府金属くず営業条例 | 金属盗対策法 |
|---|---|---|
| 手続き | 許可制(標準処理期間40日) | 届出制(営業開始前日まで) |
| 対象金属 | 金属全般(銅・真鍮・鉄・アルミ等) | 銅のみ(現時点) |
| 許可証 | あり | なし(届出番号) |
| 表示義務 | 規則様式の標識あり | 様式なしだが表示義務あり(ウェブサイトも) |
| 相手確認 | 身分証等で氏名・住所・職業・年齢 | 顔写真付き身分証、法人は法人確認も |
| 記録の保存期間 | 1年 | 3年 |
銅くずを買い受ける事業者には原則として双方が適用されます。大阪府警の整理では、法の本人確認方法に「職業」の確認を加え、法の記録に職業と売却時の払出日時・売却先を追記すれば、条例の帳簿作成義務も果たしたことになります。
罰則はどうなっているか?【違反別一覧】
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 無届営業・名義貸し | 6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科(両罰あり) |
| 虚偽届出、変更・廃止届出義務違反 | 30万円以下の罰金(両罰あり) |
| 報告義務・立入検査妨害違反 | 30万円以下の罰金(両罰あり) |
| 営業停止命令違反 | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または併科(両罰あり) |
| 指定金属切断工具の隠匿携帯(犯行用具規制・2025年9月1日施行) | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
刑事罰とは別に、指示処分や営業停止命令などの行政処分を受ける場合もあります。
事業者が準備すべきチェックリスト
- 自社の取扱品目が特定金属くずに該当するか確認する
- 営業所所在地を管轄する警察署を確認する
- 営業開始届出書を準備する
- 個人・法人別の添付書類をそろえる
- 営業所・保管場所の平面図を作成する
- 営業所・保管場所周辺の略図を作成する
- 本人確認の運用ルールを整備する
- 本人確認記録・取引記録の保存方法を決める
- 営業所・ウェブサイトへの届出番号等の表示を準備する
- 盗品疑いがある場合の社内報告・警察申告フローを作る
よくある質問(FAQ)
Q. 大阪府の金属くず商許可を持っていれば、特定金属くず買受業の届出は不要ですか?
A. 不要ではありません。銅くずを買い受けるなら、条例の許可とは別に金属盗対策法の届出が必要です。許可があっても届出がなければ「無届営業」になります。
Q. 2026年8月31日の経過措置期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
A. 経過措置は終了しているため、現状は無届営業の状態です。罰則の対象となり得るため、直ちに管轄警察署へ営業開始届出書を提出してください。
Q. 届出に費用や審査期間はかかりますか?
A. 大阪府警の案内では事務手数料はありません。届出制のため許可のような審査期間はなく、営業開始の前日までに届け出ます。
Q. 鉄やアルミのくずだけを扱う場合も届出が必要ですか?
A. 現時点で特定金属は銅のみのため、銅くずを扱わないなら金属盗対策法の届出は不要です。ただし大阪府では条例の金属くず商許可は別途必要です。
Q. 営業所を移転する場合は変更届でよいですか?
A. 変更届ではなく、営業廃止届出書を提出したうえで、新しい営業所について営業開始届出書を出し直す必要があります。
Q. 対面せずに(オンライン等で)銅くずを買い受ける場合も本人確認は必要ですか?
A. 必要です。非対面の場合は、指定されたソフトウェアを使って本人確認用の画像情報の送信を受ける方法などが案内されています。方法の詳細は管轄警察署または大阪府警の案内で確認してください。
Q. 将来、銅以外の金属も対象になりますか?
A. 警察庁は対象を「現時点では」主として銅により構成される金属くずと整理しています。今後の見直しの可能性はあるため、取扱品目が対象になっていないか、警察庁・大阪府警の最新情報を確認してください。
まとめ
特定金属くず買受業の制度は、単なる書類提出ではなく、金属盗品の流通を防ぐための本人確認・記録保存・表示・警察への申告まで含む実務ルールです。
特に大阪で金属くず商許可をすでに持っている事業者でも、銅くずなど対象となる特定金属くずを買い受ける場合は、金属盗対策法に基づく届出が別途必要になる点に注意が必要です。
経過措置はすでに終了しています。まずは管轄警察署を確認し、必要書類と取引管理体制を早急に整えておきましょう。
参考情報
最終更新日:2026年10月13日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄
