建設業許可で役員退任・就任にあわせて経管、営業所技術者等、令3条使用人が連動して変わるケースを、届出期限と必要書類ごとに整理します。

建設業許可を維持している会社では、役員の退任・就任が単独で終わらず、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、営業所技術者等(旧・専任技術者)、建設業法施行令第3条に規定する使用人の変更まで連動することがあります。

特に大臣許可で複数営業所がある会社では、1人の異動が「本社の経管」「本社の営業所技術者」「支店の営業所技術者」「支店の令3条使用人」に波及します。この記事では、実務でよくあるケースをもとに、変更届の全体像と必要書類を整理します。

想定ケース

大臣許可の電気工事業を持つC社で、次の人事異動が発生するケースです。

  • 役員M氏が退任する
  • M氏は常勤役員等(経営業務の管理責任者等)かつ本社の営業所技術者等だった
  • 東日本営業所の令3条使用人兼営業所技術者等であるI氏を取締役に就任させる
  • I氏を後任の常勤役員等・本社営業所技術者等にする
  • 東日本営業所では、A氏を後任の営業所技術者等・令3条使用人にする

このような場合、単に「役員変更届」だけを出せばよいわけではありません。許可要件に関わるポジションが同時に動くため、届出期限と添付書類を分けて管理する必要があります。

届出の全体像

変更事項主な届出提出期限
M氏の取締役退任役員等の退任30日以内
I氏の取締役就任役員等の就任30日以内
常勤役員等(経管)の変更 M氏→I氏常勤役員等の変更2週間以内
本社の営業所技術者等の変更 M氏→I氏営業所技術者等の変更2週間以内
東日本営業所の営業所技術者等の変更 I氏→A氏営業所技術者等の変更2週間以内
東日本営業所の令3条使用人の変更 I氏→A氏令3条使用人の変更2週間以内

ポイントは、役員の就退任は原則30日以内である一方、常勤役員等・営業所技術者等・令3条使用人の変更は2週間以内になることです。2週間期限の手続きが複数あるため、登記完了を待つだけでは間に合わない可能性があります。

1. 役員M氏が退任する場合

M氏の取締役退任については、役員等の退任として変更届を提出します。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 役員等の一覧表
  • 履歴事項全部証明書(辞任登記完了後のもの)

退任登記が必要になるため、登記スケジュールも含めて逆算します。

2. I氏が取締役に就任する場合

I氏を後任の常勤役員等にするには、まず法人の常勤役員等としての地位が必要です。そのため、取締役就任の届出と経管変更はセットで考えます。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 役員等の一覧表
  • 役員等の調書
  • 履歴事項全部証明書

I氏が既に令3条使用人として届出済みである場合、誓約書、登記されていないことの証明書、身分証明書が省略できる扱いになることがあります。省略可否は、提出先の手引きと個別事情で確認します。

3. 常勤役員等(経管)をM氏からI氏へ変更する場合

常勤役員等の変更は、建設業許可の要件に直結します。空白期間が生じると許可要件を満たさない状態になり得るため、最優先で確認すべき手続きです。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第7号「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書」
  • 常勤役員等の略歴書
  • 常勤性を確認できる資料
  • 経営業務の経験を確認する資料

I氏が令3条使用人としての経験で経管要件を満たす設計にする場合は、過去の変更届、令3条使用人一覧表、令3条使用人の調書、許可通知書、営業所一覧表などで、地位と経験期間を裏付けます。

4. 本社の営業所技術者等をM氏からI氏へ変更する場合

M氏の退任により、本社の営業所技術者等も交代します。I氏が東日本営業所から本社へ異動する場合、単なる追加ではなく、置かれる営業所の変更として整理する場面があります。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第8号「営業所技術者等証明書」

交代に伴う削除、置かれる営業所のみの変更、追加など、様式第8号の区分を誤らないことが重要です。

5. 東日本営業所の営業所技術者等をA氏へ変更する場合

I氏が本社へ移ると、東日本営業所の営業所技術者等が空きます。そのため、後任A氏について営業所技術者等の要件確認が必要です。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第8号「営業所技術者等証明書」
  • 資格証の写し、実務経験証明書、卒業証明書などの技術者要件確認資料
  • 常勤性を確認できる資料

電気工事業の場合、A氏の資格が該当業種の営業所技術者等の要件を満たしているかを先に確認します。特定建設業の場合は、一般建設業よりも要件確認が厳しくなるため注意が必要です。

6. 東日本営業所の令3条使用人をA氏へ変更する場合

令3条使用人は、従たる営業所において契約締結等の権限を委任される重要な立場です。I氏が本社へ移るなら、東日本営業所の後任も同時に整える必要があります。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 誓約書
  • 登記されていないことの証明書
  • 身分証明書
  • 様式第13号「令第3条に規定する使用人の調書」

A氏が既に取締役または他営業所の令3条使用人である場合は、一部書類を省略できることがあります。

実務上の最大の注意点は「空白期間を作らない」こと

このケースで最も重要なのは、M氏の退任日、I氏の取締役就任日・常勤役員等就任日・本社営業所技術者等就任日、A氏の東日本営業所の営業所技術者等・令3条使用人就任日を整合させることです。

次のような状態は避けるべきです。

  • 経管が一時的に不在になる
  • 本社または東日本営業所の営業所技術者等が不在になる
  • 従たる営業所の令3条使用人が不在になる
  • I氏が本社常勤であるはずなのに、東日本営業所の専任ポジションに残ったままになる

後任者の資格・常勤性・経験資料が揃ってから、辞任日・就任日・登記日程を設計するのが安全です。

スケジュール管理のコツ

  • まずI氏が常勤役員等の要件を満たすか確認する
  • 次にA氏が電気工事業の営業所技術者等要件を満たすか確認する
  • 株主総会・取締役就任・辞任・登記の予定を決める
  • 2週間以内の届出が必要な手続きを優先して準備する
  • 30日以内の役員変更届も同時または近いタイミングで出せるようにする
  • JCIP(電子申請)を使う場合は、添付方法や提出先の運用も事前確認する

まとめ

役員退任をきっかけに、経管、営業所技術者等、令3条使用人が連動して変わるケースでは、届出を1つずつバラバラに見るとミスが起きやすくなります。

実務では、最初に「誰が、どの営業所で、どの許可要件を担うのか」を整理し、2週間期限の変更届を中心にスケジュールを組みます。特に経管と営業所技術者等は許可要件そのものなので、空白期間を作らない設計が最重要です。

参考・出典

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