建設業許可で役員退任・就任にあわせて経管、営業所技術者等、令3条使用人が連動して変わるケースを、届出期限と必要書類ごとに整理します。

【結論】建設業許可の変更届は、役員等の就任・退任や商号・資本金の変更が「30日以内」、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)・営業所技術者等・令3条使用人の変更が「2週間以内」と、期限が2段階に分かれています(建設業法第11条・第12条)。役員人事が経管や営業所技術者等の交代に連動する場合は、最も短い2週間を基準に退任日・就任日・登記日程を逆算し、許可要件の空白期間を作らないことが最重要です。届出を怠ると建設業法第50条の罰則(6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)の対象になり得るほか、必要な届出がされていないと更新など次の許可手続きが受け付けられません。

建設業許可を維持している会社では、役員の退任・就任が単独で終わらず、常勤役員等(経営業務の管理責任者等)、営業所技術者等(旧・専任技術者)、建設業法施行令第3条に規定する使用人の変更まで連動することがあります。

特に大臣許可で複数営業所がある会社では、1人の異動が「本社の経管」「本社の営業所技術者」「支店の営業所技術者」「支店の令3条使用人」に波及します。この記事では、実務でよくあるケースをもとに、変更届の全体像と必要書類を整理します。

常勤役員等・営業所技術者等・令3条使用人とは?

常勤役員等(経営業務の管理責任者等)とは、法人の常勤の役員のうち、建設業の経営業務を総合的に管理する権限と経験を持つ者で、建設業許可の要件の一つです(建設業法第7条第1号)。実務では「経管」と呼ばれます。

営業所技術者等とは、許可を受けた業種について営業所ごとに常勤で置くことが義務付けられた技術者で、こちらも許可要件です。令和6年12月13日の改正までは「専任技術者」と呼ばれていました。

令3条使用人とは、建設業法施行令第3条に規定する使用人のことで、従たる営業所(支店・営業所)において請負契約の見積り・入札・契約締結などの権限を委任された支店長・営業所長等を指します。

変更届の提出期限は何日以内か?【変更事項別一覧】

変更届の期限は変更事項ごとに決まっており、大きく「30日以内」と「2週間以内」の2段階に分かれます。関東地方整備局の手引きに基づく主な期限は次のとおりです(大阪府の様式ページでは2週間以内を「事実発生後14日以内」と表記しています)。

変更事項届出期限
商号又は名称30日以内
営業所の所在地・電話番号30日以内
資本金額30日以内
代表者・役員等の就任・退任30日以内
従たる営業所の新設・廃止30日以内
常勤役員等(経管)の変更・追加・削除2週間以内
営業所技術者等の変更・追加・削除2週間以内
令3条使用人の就任・退任・変更2週間以内
健康保険等の加入状況2週間以内
欠格要件に該当したとき2週間以内
決算変更届(毎事業年度)事業年度終了後4か月以内
廃業届30日以内

なお、大臣許可では総株主の議決権の5%以上を有する株主等に変更があった場合、変更を覚知してから30日以内の届出が必要です。

どんな人事異動で変更届が連動するのか?【想定ケース】

大臣許可の電気工事業を持つC社で、次の人事異動が発生するケースです。

  • 役員M氏が退任する
  • M氏は常勤役員等(経営業務の管理責任者等)かつ本社の営業所技術者等だった
  • 東日本営業所の令3条使用人兼営業所技術者等であるI氏を取締役に就任させる
  • I氏を後任の常勤役員等・本社営業所技術者等にする
  • 東日本営業所では、A氏を後任の営業所技術者等・令3条使用人にする

このような場合、単に「役員変更届」だけを出せばよいわけではありません。許可要件に関わるポジションが同時に動くため、届出期限と添付書類を分けて管理する必要があります。

このケースでは何の変更届が必要か?【6つの届出の全体像】

変更事項主な届出提出期限
M氏の取締役退任役員等の退任30日以内
I氏の取締役就任役員等の就任30日以内
常勤役員等(経管)の変更 M氏→I氏常勤役員等の変更2週間以内
本社の営業所技術者等の変更 M氏→I氏営業所技術者等の変更2週間以内
東日本営業所の営業所技術者等の変更 I氏→A氏営業所技術者等の変更2週間以内
東日本営業所の令3条使用人の変更 I氏→A氏令3条使用人の変更2週間以内

ポイントは、役員の就退任は原則30日以内である一方、常勤役員等・営業所技術者等・令3条使用人の変更は2週間以内になることです。2週間期限の手続きが複数あるため、登記完了を待つだけでは間に合わない可能性があります。

1. 役員M氏が退任する場合

M氏の取締役退任については、役員等の退任として変更届を提出します。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 役員等の一覧表
  • 履歴事項全部証明書(辞任登記完了後のもの)

退任登記が必要になるため、登記スケジュールも含めて逆算します。

2. I氏が取締役に就任する場合

I氏を後任の常勤役員等にするには、まず法人の常勤役員等としての地位が必要です。そのため、取締役就任の届出と経管変更はセットで考えます。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 役員等の一覧表
  • 役員等の調書
  • 履歴事項全部証明書

I氏が既に令3条使用人として届出済みである場合、誓約書、登記されていないことの証明書、身分証明書が省略できる扱いになることがあります。省略可否は、提出先の手引きと個別事情で確認します。

3. 常勤役員等(経管)をM氏からI氏へ変更する場合

常勤役員等の変更は、建設業許可の要件に直結します。空白期間が生じると許可要件を満たさない状態になり得るため、最優先で確認すべき手続きです。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第7号「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書」(常勤役員等を直接補佐する者を置く体制=いわゆる「ロ」の場合は様式第7号の2「常勤役員等及び補佐する者証明書」)
  • 常勤役員等の略歴書
  • 常勤性を確認できる資料
  • 経営業務の経験を確認する資料

I氏が令3条使用人としての経験で経管要件を満たす設計にする場合は、過去の変更届、令3条使用人一覧表、令3条使用人の調書、許可通知書、営業所一覧表などで、地位と経験期間を裏付けます。なお大阪府では、「ロ」該当から「イ」該当に変更した場合などに様式第22号の3「届出書」の添付も求められています。

4. 本社の営業所技術者等をM氏からI氏へ変更する場合

M氏の退任により、本社の営業所技術者等も交代します。I氏が東日本営業所から本社へ異動する場合、単なる追加ではなく、置かれる営業所の変更として整理する場面があります。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第8号「営業所技術者等証明書」

交代に伴う削除、置かれる営業所のみの変更、追加など、様式第8号の区分を誤らないことが重要です。大阪府では、これらに加えて営業所技術者等一覧表(様式第1号別紙4)の添付も求められています。

5. 東日本営業所の営業所技術者等をA氏へ変更する場合

I氏が本社へ移ると、東日本営業所の営業所技術者等が空きます。そのため、後任A氏について営業所技術者等の要件確認が必要です。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 様式第8号「営業所技術者等証明書」
  • 資格証の写し、実務経験証明書(様式第9号)、卒業証明書などの技術者要件確認資料
  • 常勤性を確認できる資料

電気工事業の場合、A氏の資格が該当業種の営業所技術者等の要件を満たしているかを先に確認します。特定建設業の場合は、一般建設業よりも要件確認が厳しくなるため注意が必要です(指導監督的実務経験で要件を満たす場合は様式第10号「指導監督的実務経験証明書」も必要)。

6. 東日本営業所の令3条使用人をA氏へ変更する場合

令3条使用人は、従たる営業所において契約締結等の権限を委任される重要な立場です。I氏が本社へ移るなら、東日本営業所の後任も同時に整える必要があります。

主な書類は次のとおりです。

  • 様式第22号の2「変更届出書」(第一面)
  • 誓約書(様式第6号)
  • 登記されていないことの証明書
  • 身分証明書
  • 様式第11号「建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表」
  • 様式第13号「令第3条に規定する使用人の調書」

A氏が既に取締役または他営業所の令3条使用人である場合は、一部書類を省略できることがあります。大阪府の様式ページでは、役員が新たに支店長等を兼ねる場合や支店長間の交替の場合は、誓約書・登記されていないことの証明書・身分証明書は不要とされ、役員が支店長等を兼ねる場合は様式第13号ではなく様式第12号「許可申請者の調書」を使うとされています。

必要書類を一覧で確認するには?【届出別の主な様式】

上の6つの届出で使う主な様式を整理すると次のとおりです。いずれも様式第22号の2「変更届出書」(第一面)が表紙的な役割を果たし、変更内容に応じた様式を添付します。

届出期限主な様式・添付書類
役員等の就任・退任30日以内役員等の一覧表、履歴事項全部証明書、(就任時)役員等の調書 等
常勤役員等(経管)の変更2週間以内様式第7号(ロの体制は第7号の2)、略歴書、常勤性・経験の確認資料、場合により様式第22号の3
営業所技術者等の変更2週間以内様式第8号、(大阪府)一覧表=様式第1号別紙4、資格証・実務経験証明書(様式第9号)等
令3条使用人の変更2週間以内様式第6号(誓約書)、様式第11号(一覧表)、様式第13号(調書)、登記されていないことの証明書・身分証明書

添付書類の範囲は許可行政庁ごとに細部が異なります。大臣許可は各地方整備局、知事許可は各都道府県の手引きで最終確認してください。

実務上の最大の注意点は「空白期間を作らない」こと

このケースで最も重要なのは、M氏の退任日、I氏の取締役就任日・常勤役員等就任日・本社営業所技術者等就任日、A氏の東日本営業所の営業所技術者等・令3条使用人就任日を整合させることです。

次のような状態は避けるべきです。

  • 経管が一時的に不在になる
  • 本社または東日本営業所の営業所技術者等が不在になる
  • 従たる営業所の令3条使用人が不在になる
  • I氏が本社常勤であるはずなのに、東日本営業所の専任ポジションに残ったままになる

後任者の資格・常勤性・経験資料が揃ってから、辞任日・就任日・登記日程を設計するのが安全です。

スケジュール管理のコツ

  • まずI氏が常勤役員等の要件を満たすか確認する
  • 次にA氏が電気工事業の営業所技術者等要件を満たすか確認する
  • 株主総会・取締役就任・辞任・登記の予定を決める
  • 2週間以内の届出が必要な手続きを優先して準備する
  • 30日以内の役員変更届も同時または近いタイミングで出せるようにする
  • JCIP(電子申請)を使う場合は、添付方法や提出先の運用も事前確認する

知事許可(大阪府)の場合、提出方法はどう違うか?

この記事のケースは大臣許可ですが、大阪府知事許可の会社で同じ人事異動が起きた場合も、届出期限の考え方は同じです。書面で提出する場合の大阪府の運用は次のとおりです(2026年9月時点の大阪府「様式等のダウンロード(各種変更届)」ページによる)。

項目大阪府の取扱い
提出部数2部(受付後、1部を副本として返却)
表紙各種変更届には府の「変更届の表紙」を付ける
提出方法郵送、または申請受付会場内の専用投函ボックス(詳細は「建設業許可変更等届出の手引き」)
登記事項証明書・市町村の長の証明書発行日から3か月以内の原本

電子申請(JCIP)で届け出ることもできますが、添付書類の扱いは書面と異なる場合があるため、事前に府の案内を確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 変更届を出し忘れるとどうなりますか?

建設業法第50条の罰則(6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金。2025年6月1日の改正刑法施行により「懲役」から「拘禁刑」に変更)の対象になり得るほか、必要な届出がされていないと許可の更新や業種追加などの申請手続きができません。期限後でも受理はされるため、気づいた時点で速やかに提出してください。提出できなかった理由や再発防止策について書面で報告を求められる場合があります。

Q. 経管や営業所技術者等の後任がいないまま退任するとどうなりますか?

常勤役員等(経管)や営業所技術者等は許可要件そのものなので、後任不在のまま退任すると要件を欠き、許可取消し(建設業法第29条第1項第1号)の対象になります。後任がいないまま要件を欠いた場合は、変更届出書(様式第22号の2)とあわせて届出書(様式第22号の3)を2週間以内に提出する必要があります。退任日を決める前に、後任者の要件確認を済ませておくことが重要です。

Q. 取締役が支店長(令3条使用人)を兼ねる場合、書類は減りますか?

減ることがあります。大阪府の様式ページでは、役員が新たに支店長等を兼ねる場合や支店長間の交替の場合、誓約書・登記されていないことの証明書・身分証明書は不要とされています。ただし調書は、役員が支店長等を兼ねる場合は様式第12号「許可申請者の調書」を使います。大臣許可の場合は地方整備局の手引きで確認してください。

Q. 添付する証明書類に有効期限はありますか?

関東地方整備局の手引きでは、登記事項証明書など発行日のある書類は発行から3か月以内のものを提出するとされています(卒業証明書等は除く)。大阪府も、登記されていないことの証明書(登記事項証明書)や市町村の長の証明書(身分証明書)は発行日から3か月以内の原本としています。取扱いは行政庁ごとに異なるため、提出先の手引きで確認してください。

Q. 変更届は電子申請(JCIP)でも提出できますか?

できます。大臣許可はJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)での届出に対応しており、知事許可も多くの都道府県で利用できます。書面提出の場合、関東地方整備局は原則郵送、大阪府は郵送または専用投函ボックスとされるなど、提出方法は行政庁ごとに異なるため事前に確認してください。

Q. 交代した営業所技術者等は、現場の主任技術者を兼ねられますか?

営業所技術者等は営業所に常勤することが前提のため、現場の技術者との兼務は建設業法第26条の5などが定める一定の要件を満たす場合に限られます。後任者を現場と兼務させる予定がある場合は、変更届の前に兼務の可否も確認しておきましょう。詳しくは主任技術者・監理技術者の配置要件の記事で解説しています。

まとめ

役員退任をきっかけに、経管、営業所技術者等、令3条使用人が連動して変わるケースでは、届出を1つずつバラバラに見るとミスが起きやすくなります。

実務では、最初に「誰が、どの営業所で、どの許可要件を担うのか」を整理し、2週間期限の変更届を中心にスケジュールを組みます。特に経管と営業所技術者等は許可要件そのものなので、空白期間を作らない設計が最重要です。

参考・出典

最終更新日:2026年9月28日
監修:行政書士 伊敷紀巳雄(行政書士ARISEリーガルオフィス)

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